ここで紹介するのは、あくまでも素人飼鳥家として知っておくべき知識です。鳥の状態、症状を素人判断すること、ましてや投薬治療することは危険です。予防と早期発見に努め、信頼できる獣医師の先生の診断と治療に任せましょう。 |
目次 |
1 病気の初期症状 2 民間療法 3 大型インコのかかりやすい病気(カゼ・鼻眼結膜炎・腸炎・そ嚢炎・脂肪過多症・甲状腺腫・毛引き症) 4 真菌による感染症(カンジダ症・アスペルギルス症) 5 原虫による感染症(ジアルジア症・トリコモナス症・トキソプラズマ症・コクシジウム症) 6 細菌による感染症(サルモネラ症・大腸菌症・その他のグラム陰性菌症・メガバクテリア症) 7 ウイルスによる感染症(ヘルペスウイルス(パチェコ氏)病・レオウイルス病・パポバウイルス病・PBFD・オウム病・ニューカッスル病) 8 感染症関係用語(および主な抗生物質・化学療法剤、トモジン−ネオについて) |
どのような病気でも、初期症状は「元気がなくなる、鳴かなくなる、食欲が低下する」にはじまり、やがて「羽毛を逆立て膨らんだ状態になる、クシャミや鼻水を出す、下痢をする」ようになります。この段階で病院に連れて行き、適切な治療を受けましょう。
まず飼い主がすることは「隔離」と「保温」です。28〜30度の温度が確保できるように、アンカやペットヒーター、白熱灯などを用いて保温をしてあげてください。これは隔離にもなり、他の鳥への伝染を防止することにもなります。動物病院に連れて行くときも、寒い時期は適切な方法で温度確保に努めてください。「保温」はあらゆる病気の初期手当ての鉄則です。心配ならば、あらかじめ病気の時のための「病禽ケージ」を用意しておくと良いでしょう。小さ目のケージ(動き回って体力を消耗させないため。大きなガラス水槽でも可)内にペットヒーターを入れ、低い位置に止まり木をつけたものです。
なお、鳥は病気をかくします。人の見ている前では元気なそぶりをします。気付かれないようにそっと様子を見てください。食欲がなくても食べるふりをします。日頃からの体重測定とフンの出具合(量と状態)をこまめにチェックしましょう。幼鳥は水気が多いフンをする場合が多いですが、これは食餌によるもので異常ではありません。
ヒインコ科の鳥種は軟便なので下痢の判断が難しいところです。
フンの形状に異常が現れることはよくあります。健康時の状態を良く観察してください。鳥は基本的にはヒトのような完全に液体の尿はしません。フンの白い部分が尿(尿酸)です。しかし、若鳥や大型インコで水分の摂取が多い場合は、固形のフンの周囲に透明な尿のようなものが見られますが、これは尿ではなく、単に過剰摂取した水分です。望ましいことではありませんが、「イコール病気」ではありません。大型インコ、ヒナや若鳥に多く見られ、また精神的な緊張などでおこることもあります。水分の摂取量の制限をするなどで改善を図ります。ただしあまり目立つようならば下記の図をご参照の上、獣医師に相談してください。
なお、鳥は便をこまめにしますが、朝一番の目覚め直後の便は通常時の2〜3倍の量になります。
ヨウム(左)とオオハナインコ(右)のフン 鳥種・個体差・何を食べてかによって、フンの色は変化しますが、通常は緑褐色の 渦巻き状または棒状(ヨウムやモモイロインコに多い)で、特に臭いはしません。白い部分は尿酸塩です。真性下痢は固形部分がなく全体が粘液状で、泡立ち悪臭を放つことが多いのです。定期的検便で様々な病気の早期発見が可能になります。個体により色・形状は異なりますので、日頃からその子の正常便の形状を把握しておきましょう。 |
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フンの形状と健康度 上記のとおり、総排泄腔というところでフンと尿が混じり合って排泄されるため、鳥の尿はフンの白い部分であり、通常の場合水状態の「オシッコ」はしません(図A)。オシッコの水が排泄される(図B)は「水分過多便」(多尿便)で、幼鳥や大型インコの場合に見られますが、異常ではありません。ただし望ましいことではありませんので飲水制限などが必要です。健康診断の際に獣医師に相談すると良いでしょう。腎臓疾患・痛風の可能性もないではありません。 下痢(図C)は完全に病気の状態を示します。肛門の周囲の羽毛も汚れていることが多いでしょう。この下痢便が鮮緑色である場合は絶食が原因であるようです。 |
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明らかな異常便 左のような便は明らかな異常を示しています。 尿部分がピンク色や赤い場合(図A)は「血色素尿」で、細菌感染による腎臓障害が原因であると考えられます。ただし、便の色は食物と密接な関連があるので、唐辛子などカロチンの多い食べ物を摂取した後は赤茶色の便をします。便が白色で穀物の粒がある(図B)は「不消化便」で、粟玉で差し餌されている鳥では正常ですが、成鳥の場合は胃腸障害でしょう。尿酸部分が泡だったりキラキラ結晶がある場合(図C)は、腎臓疾患の疑いが濃厚でしょう。 |
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下痢時の肛門周囲の羽毛 左図の左側は肛門周囲の羽毛の汚れを示します。肛門周囲の羽毛は淡色であるので、下痢便の緑褐色が付着すると目立ちます。鳥は排泄時に肛門がややせり出て羽毛を汚さないのですが、液質の下痢便ですと汚れてしまいます。下痢の判断で一目瞭然です。右側は粘稠(ねんちゅう)質の粘りけに富んだ便で、肛門からブラ下がります。これはジアルジア原虫の寄生が原因であることが多いものです。 |
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脱肛 下痢が長期間に及ぶと直腸が肛門から逸脱して「脱肛」を起こします。抗生剤軟膏を塗ったゴム手袋で押し戻しますが、癖になることも多く、肛門部が切れてしまうことも多いので、ここまで来たならばとりあえず保温し、動物病院に急行しましょう。 |
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体重の測定 食餌を正常に摂取しているか、きちんと消化吸収されているか、下痢などをしていないか、などは最低でも3日に1回の体重測定で明らかになることも多いので定期的・定時(朝食前)的な体重測定は欠かせません。 写真のようにキッチンスケールに止まり木を付けたものを作り、その状態で目盛をゼロにしておけば、実に簡単に計測することができます。 |
健康時にフンの状態を確認しておくと同時に、1日の排泄重量を計測しておくと、食べなくなったときのすぐにわかります。
さっそく1日に排泄するフン重量を1週間計測してみましたのでご参考に。朝の定時測定ですので乾燥状態の古いフンと水分のある新しいフンの合計重量ですから参考値です。1週間の平均値ですが大きくはずれる数値はありませんでした。
鳥種 | 年齢 | 体重 | フン |
ヨウム | 5歳 | 500g | 20g |
オオハナインコ | 5歳 | 400g | 15g |
キエリボウシインコ | 1歳半 | 460g | 15g |
アケボノインコ | 2歳 | 225g | 10g |
自分で排泄したフンをクチバシで突つくことはよくあります。だいたいは、フン切り網についたフンを外に放り出して、自分の巣(テリトリー)を清潔に保とうとする行動のようです。しかし、はっきり「食べて」いることもあります。食糞はヒトが考えるほど異常な行動ではありませんが、原因としては
(1)好奇心、おもちゃ代り、(2)ビタミン不足、(3)内部寄生虫の存在
が考えられます。気になるようならばまず(2)を疑って、青菜・ビタミン剤(特にビタミンB群)を多めに与えるようにしてください。たいていは改善されますが、長期にわたり改善が見られない場合は(3)も考えられますので、獣医師に相談してください。
昔から素人が用いてきた治療法を「民間療法」といいます。
こうした治療法は、まったく意味のないことと断言はできませんが、非常に危険なことです。特別な事情がない限り、保温以外の対策は素人がすべきではありません。「人間用の薬を20分の1量与える」ということも言われますが、同様に危険です。
素人としてしておくべき大切なこともあります。それは、「移動用キャリーに慣らしておく」ことと、「スポイト式の液体栄養剤を時々与え、スポイトから薬剤を飲むことに対する抵抗感をなくしておく」ことです。これが意外に大切なことです。さらに薬剤を受け付けないコには、「フォーミュラ」などの高栄養の粉状餌を薬剤と混ぜて団子状にして与えます。スムーズに食べさせるために、たまにフォーミュラ団子を与え慣らしておくのも良いかもしれません。
病気への抵抗力を高めるにはビタミンAが重要な働きをすると言われますが、脂溶性ビタミンであるV−Aの摂取過剰は害がありますので、栄養剤の与え過ぎは禁物です。緑黄色野菜に含まれる「β-カロチン」は「プロビタミンA」と呼ばれ、体内でV−Aに変換するものです。これは過剰摂取した場合に体外に排出されますので、ビタミンAはできるだけ野菜で補いましょう。
鳥は体内でビタミンCを合成できるために、通常は特に意識して補う必要はありませんが、肝臓疾患の場合は肝臓保護のために積極的にV−Cを含む餌を与えた方が望ましいとされます。
ここに示した病気は、インコ類がかかりやすい病気の症状です。その原因は「4」以降で説明する感染症がほとんどです。ですから、この項目は「4」以降の説明と併せて見る必要があります。
カゼ|鼻眼結膜炎|腸炎|そ嚢炎|脂肪過多症|甲状腺腫|毛引き症
病名 | カゼ(上部気道感染症の総称) |
症状 | クシャミ、鼻水、羽毛を膨らませる、昼間目をつぶっている、止まり木から降りて隅でうずくまる。下痢をすることもある。 |
原因 | 体力低下時に風にあたる、温度変化を受けさらに体力が低下したときに病原菌に感染する。 |
治療 | まず保温。栄養分の適切な摂取(場合によっては強制給餌)、病原菌に応じた抗生物質(テラマイシンなど)の投与。鳥は呼吸器の形状が複雑なので、慢性化しやすい。いつまでも続くようならば飲み薬だけでなく「ネブライザ」と呼ばれる吸入器で呼吸器に薬剤を吸入させる。 |
予防 | 寒い時期に風に当てない。一日の温度変化の激しい場所にケージを置かない。水浴びにお湯を使わない(脂肪が溶けてしまう)。適切な栄養を十分摂らせる。 |
病名 | 鼻眼結膜炎 |
症状 | カゼの重い症状。朝夕のひんぱんなクシャミ。涙目、目やに、金網で目をこする。なまアクビ。喉の奥にチーズ状のかたまりができる。いびきをかくようになる。目の症状を放置すると、目が白濁し、失明することもある。耳孔から粘液が出ることもある。 |
原因 | カゼの病原菌やカビなどが鼻の奥の複雑な形状をした器官に入り、繁殖する。 |
治療 | 病原菌に応じた適切な抗生物質(テトラサイクリン系など)、抗真菌剤の投与。目の症状がひどい場合は眼軟膏(マクロライド系など)を塗布する。素人の手にはおえない病気である。 |
予防 | カゼの場合と同様。「鼻かぜだろう」と甘く見るとここまで進行してしまう。保温と栄養補給は不可欠。 |
病名 | 腸炎 |
症状 | 水様性の下痢、飲水量の増加。食欲の低下、嘔吐。 |
原因 | 飲水や餌の腐敗など、衛生管理の不徹底。 |
治療 | 原因となる細菌・ウイルス・真菌(カビ)に応じた薬剤の投与。サルファ剤を飲み水に入れることが多い。栄養不足になりがちなので、必要に応じて強制給餌。抗生物質を用いると真菌の増加を招く恐れがあるので、ナイスタチンなどの抗真菌剤やビタミン剤を併用する。 |
予防 | ケージおよび周辺の衛生管理。飲水・餌・青菜などは常に新鮮さを保つ。フンでよごれた敷き紙はこまめに交換する。 |
病名 | そ嚢炎 |
症状 | 嘔吐、飲水量の増加、首の付け根の腫れ。嘔吐物の悪臭。 |
原因 | 腸炎と同様の衛生管理の不徹底。人間の食べ物(パン・ごはん・うどん・味のついたもの)などを与えること。ヒナの場合、粟玉や練餌の作り置きを与えること。成鳥になっても差し餌を続けていること。殺虫剤吸引などの中毒の場合もある。 |
治療 | 腸炎と同様に、抗生物質、抗真菌剤、ビタミン剤の投与。悪化した場合は切開手術が必要になることもある。 |
予防 | 衛生管理の徹底。人間の食べ物(生野菜や果物など以外)を与えないこと。味のついた食べ物を与えると、本来の主食を拒否したり、腎臓などの器官にダメージを与えることがあるので特に気を付けること。 |
病名 | 脂肪過多症およびそれが原因となる心臓病、糖尿病、痛風、脂肪肝 |
症状 | 体重の増加、動作の鈍さ、羽毛をかき分けると黄色い脂肪が見える。糖尿病になると飲水量の増加、痛風になると脚の障害(脚を引きずるようになる、指の腫れ、、止まり木止まれない)など。人間の生活習慣病(成人病)と同様)。脂肪肝では行動緩慢に加えて腸疾患(便秘・軟便)なども。 |
原因 | 採餌量の過多。特に脂肪餌(ヒマワリ・麻の実・サフラワー・落花生・クルミなど)の与え過ぎ。飼鳥の場合、慢性的な運動不足状態であるので、自然界における餌よりも粗食にしなければならない。痛風はビタミンAの不足や動物性タンパク質の過剰摂取による場合が多い。 |
治療 | 脂肪餌を主食としないこと。運動量の確保(ただし室内飼いの場合は限度がある。人間のダイエット同様、「運動より食餌療法」と考えたほうが良い)。ホルモン調整のために飲水にヨードグリセリンを1滴投与する。痛風の場合はカルシウムとビタミンAおよびB1を与える(ただし根本的治療ではない)。脂肪肝には脂肪沈着を防止するメチオニン・コリン・ビタミンB12の投与。 |
予防 | 上記のとおり、脂肪餌を減らし、燕麦やソバなどの低脂肪餌もしくはペレットに切り替える。「よく食べるから身体にも良いのだろう」と考えるのは、子供が食べたがるからと菓子ばかり与えるのと同様、本当の愛情ではないと心得ること。 |
病名 | 甲状腺腫 |
症状 | 不活発で、いつも眠ってばかりいる。不健康な体の状態(皮膚の異常乾燥、バサバサしたみすぼらしい羽毛)、さらに気候が悪いときなどは体温を維持できない。血中のコレステロール値が増加する。脂肪沈着が増加するので体重は増加するが、これは不健康な体重増加である。呼吸器・消化器ともに異常を示すことがある。特に甲状腺が腫大して気管を圧迫するので喘息のようなヒューヒュー音を出す。嘔吐する場合もある。 |
原因 | 食餌中のヨウ素分の不足により、チロキシン(ホルモン)合成が円滑に行われないことによる。ヨウ素が多いのはボレー粉。 大豆はチロキシン合成を妨げる成分を含有する。アブラナ科植物(キャベツなど)も甲状腺腫の誘因となる。 |
治療 | 著しい場合は注射によるが、通常の場合は飲水にヨウ素を入れる。具体的には15倍に希釈したルゴール液を滴下。 比較的治癒しやすいので、早めの治療を受けると予後が良好である。 |
予防 | 食餌にヨウ素、ボレー粉(カキ殻)、タラの肝油などを添加する。飲水にルゴール液を1週に1回、滴下する。 |
病名 | 毛引き症 |
症状 | 自分で自分の羽毛を抜いてしまう。ひどいときはクチバシの届く限り全部抜いてしまい、やがては皮膚・肉まで食いちぎってしまうようになる場合もある。 |
原因 | 病気というより悪癖に近い。退屈さやストレスなどの精神的な鬱屈ではじめる場合がほとんどである。白色オウムなど、脂粉(こなう)のよく出る鳥種の場合、水浴びをさせずに放置すると脂粉が沈積し、それが原因となることもある。 |
治療 | 根本的にはストレス解消。対症療法では出血部の消毒、カルシウムの補給、「エリザベスカラー」と呼ばれるプラスチックの首輪をつけて、羽毛にクチバシが届かないようにする。ただし拒食症になるおそれがあるので注意する。 アロエの絞り汁を当該箇所に少量塗り、皮膚の再生促進と同時に苦みによる、つつき忌避を図る。また、リステリンを含む口中うがい薬を等分の水で希釈した液体を塗って治したという報告もある。。 |
予防 | ストレスを取り除くように飼い主が気を配る。ケージにオモチャを入れて退屈させない。水浴びを適度にさせて脂粉の沈積を防止する。 |
病名 | カンジダ症 |
症状 | 食欲不振、体重減少。元気喪失。舌・喉・そ嚢の壊死性潰瘍(粘膜上に灰白色のタオル状のものが付着)。粘膜の肥厚。 |
原因 | どこにでもある酵母の異常繁殖が原因。長期間にわたる抗生物質の投与、高炭水化物(人間の食べ物などに多い)の給餌、ビタミン不足などが誘因となる。若鳥に多い。 |
治療 | 抗真菌剤(マイコスタチンやナイスタチンなど)の投与。ビタミンA,Bの補給。 |
予防 | 衛生管理の徹底。濡れ餌を作り置きしないこと。新導入鳥の検疫。病鳥の隔離。 |
病名 | アスペルギルス症 |
症状 | 開口呼吸、呼吸困難、食欲不振、気管からゴロゴロ音がする。進行すると下痢、運動失調、神経症状。気嚢や肺に黄緑色のチーズ状の結節がみられる。白血球の増加。致死率は高い。人畜共通感染症。 |
原因 | 不衛生な環境における胞子の吸入。ヒナや若鳥など抵抗力が低い時期に多発する。抗生物質の長期連続投与も要因。 |
治療 | アンホテリシンBの投与。その他2次感染予防のための抗生物質の投与、吸入療法など。 |
予防 | 衛生管理の徹底。伝染力が強いので、隔離。ケージや周辺の消毒。他の鳥の飲水に沃化カリウムを添加する。 |
原虫は原生動物とも呼ばれる生物で、アメーバやゾウリムシなどの仲間です。これらの中で主に消化器系に寄生し病気を引き起こすものがあります。原虫の生活史は多様ですが、シスト(その中でも特にオーシストと呼ばれるもの)という殻に包まれたサナギのような状態で寄生相手「宿主(しゅくしゅ)」のフンなどに混じって排出されます。ですからフンの清掃が原虫感染の最大の防疫です。
原虫については「原生生物情報サーバ」Samacha氏の「TORTOISE
LAND」をご参照ください。
病名 | ジアルジア症(ギアルディア症) |
症状 | 泡状悪臭のある慢性下痢。消化不良、体重減少。フンは粘り気があり、肛門から垂れ下がったようになる。フンの顕微鏡検査でシスト(原虫の卵みたいなものと考えれば理解しやすい)を検出できる。人畜共通感染症のひとつ。 |
原因 | ランブル鞭毛虫と呼ばれる原虫が病鳥のフンを経て経口感染する。大腸で繁殖し、腸壁に障害をもたらす。小型インコは感受性が高い。致死率は20〜50%。なお、同様の症状を示すものに同じ仲間の原虫「ヘキサミタ」があり、オカメインコなどではほとんどヘキサミタではないかと言う説もある。ディプロモナス目ヘキサミタ科の中にヘキサミタ属とジアルジア属がある。 |
治療 | ニトリチアゾール、ジメトリダゾールなどを飲水投与する。 |
予防 | クレゾール石鹸などでの衛生管理の徹底。原虫による感染症は衛生管理が不可欠である。病鳥は隔離する。 |
病名 | トリコモナス症 |
症状 | 初期症状では喉のあたりでプチプチと音を立てる。やがて口腔・食道・喉の奥にチーズ状の塊が見られる。食欲不振、下痢、やせる、呼吸困難、肝臓の肥大。成鳥では感染しても発生しない(キャリア)場合もあり、こうした鳥が他に感染させることがある。大型インコは比較的抵抗性が強い。海外ブリーディングのオカメインコにきわめて多く見られる。 |
原因 | 原虫オーシストがフンを経て経口感染する。伝染力は強力である。 |
治療 | メトロニダゾールやジメトリダゾールの飲水投与。エンヘプティンも効果的だが副作用に気を付けねばならない。 |
予防 | 衛生管理の徹底。キャリアが多いといわれる輸入鳥の検疫と早期の健康診断。オーシスト(卵)は熱に弱いのでケージおよび器具、周辺の熱湯消毒。病鳥の隔離。差し餌中ならば1羽ごとに差し餌用具を変える。 |
病名 | トキソプラズマ症 |
症状 | 急激に衰弱し突然死亡することも多い。元気喪失、食欲不振などはら始まり、神経症状(斜頚など)も起きる。肝臓や脾臓の肥大を起こし、それに伴う諸症状を示すが、そこまでいたる前に死亡することが多い。 |
原因 | 原虫オーシストがフンを経て経口感染する。伝染力は強力である。 |
治療 | スルファジメトキシンなども効果を示すが、間に合わないケースがほとんど。治療は難しい。 |
予防 | 衛生管理の徹底。猫のフンから感染するともいわれる(異説あり)ので、その排除。病鳥の隔離とケージの消毒。 |
病名 | コクシジウム症 |
症状 | 腸炎の症状を示し、下痢。悪化すると水様便に血液が混じってくる。ときには開口呼吸、しゃがみこんでしまう、やせてくるなど。致死性は高くない。フィンチやキュウカンチョウに多く、インコには見られないという報告もある。 |
原因 | 原虫およびオーシストがフンを経て経口感染する。 |
治療 | アンプロリウムやサルファ剤の投与。サルファ剤は連続的に投与すると副作用(抵抗性と毒性)が生じる場合があるので、4日投与したら2〜3日休み、また4日投与すると無理なく効果的である。 |
予防 | すべての伝染病と同様に衛生管理の徹底。フンの毎日の排除。病鳥の隔離。 |
病名 | サルモネラ症 |
症状 | 緑白色下痢、食欲不振、元気消失。やがて昼間も目をつむり、そ嚢炎症状、肝臓および脾臓の腫大と壊死。心臓疾患にも発展する。幼鳥の場合は敗血症(細菌が体内で繁殖し、毒素が血液に混入する)で急死することも多い。 |
原因 | ドブネズミや野鳥からの水平感染。糞便を経由し経口感染する。 |
治療 | テトラサイクリンなどの抗菌スペクトルの広い(効く対象範囲の広い)抗生物質の投与。 |
予防 | 衛生管理の徹底。すべての感染症に共通であるが、鳥の飼い主は外で他の鳥にはあまり触れないこと。触れた場合は、帰宅するとすぐに手、腕の洗浄殺菌をする必要がある。 |
病名 | 大腸菌症 |
症状 | 呼吸器・消化器・泌尿器、各器官に症状が出る。緑色下痢や元気消失で様子を見ていると敗血症になる場合がある。ヨウムは敗血症になりやすく、その場合の致死率は高い。 |
原因 | 環境や飼料から感染する。大腸菌はどこにでもあるが、穀食鳥や果食鳥の常在細菌ではない。 |
治療 | 大腸菌は薬剤耐性が強いので、数種類の抗生物質を投与する必要がある。 |
予防 | 衛生管理の徹底。飼い主の手指の消毒。 |
病名 | その他のグラム陰性かん菌症 |
症状 | 発生部位により下痢、胃腸炎、肺炎、気嚢炎、肝炎など症状はさまざま。敗血症を起こしやすく、その場合は急性の経過をたどって死亡する。 |
原因 | 環境不良、ストレス、密集飼育などにより体力消耗したときに病鳥のフンや汚染飼料から感染。 |
治療 | テトラサイクリンなどの抗菌スペクトルの広い(効く対象範囲の広い)抗生物質の投与。 |
予防 | 衛生管理の徹底。汚染飼料、不適切な動物性タンパク(ペット用にぼし、安価なドッグフードなど)を与えない。 |
病名 | メガバクテリア症 |
症状 | 元気消失、体重減少、嘔吐、下痢、出血など。突然死してしまうこともある。前胃の炎症および潰瘍をおこすこともある。近年明らかになった細菌症である。 |
原因 | 嫌気性(酸素を嫌う)グラム陽性菌が飼料と共に経口感染する。 |
治療 | ワクチンはないので、テトラサイクリン系の抗生物質投与。 |
予防 | 衛生管理の徹底。汚染飼料を与えない。 |
ウイルスは極めて微小なため、通常の顕微鏡検便では発見できない。特殊な染色法と電子顕微鏡での検査を要するため、一般の動物病院では明確にならない場合も多い。また、感染を完全に防ぐことは難しい。またほとんどの抗生物質は無力である。体力免疫力をつけ、発病させないようにすることが何よりも大切である。「予防」に「新導入鳥の2週間以上の検疫隔離」というのは先住鳥の感染予防のためのもので、「新導入鳥」自身の感染予防ではない。
病名 | ヘルペスウイルス症(パチェコ氏病) |
症状 | 下痢、食欲不振、鼻汁と呼吸困難。極めて致死率が高く、インコの場合、これといった症状が出る前に急性の経過をたどって死亡することが多い。解剖検査で肝臓や脾臓の腫大、壊死が発見されることが多い。メキシコインコは不顕性感染鳥(キャリアー)が多いともいわれる。 |
原因 | キャリアーがウイルスを持ち込み、分泌物やフンから経口および空気感染。伝染力はきわめて高い。ブリーディング鳥には少ないとされるが、ショップなどで感染する場合もある。 |
治療 | アジュバント添加不活化ワクチン、アスコルビルの筋肉注射。クロールヘキシジンの飲水への投与(長期は危険)。 |
予防 | 基本的に完全な予防は困難。 衛生管理の徹底。ストレスをかけない配慮。新導入鳥の2週間以上の検疫隔離。 |
病名 | パポバウイルス症(フレンチモルト、コロ) |
症状 | セキセイに多く、大型インコでは比較的少ないが、皆無ではない。ヒナ期の飛翔翼や尾羽の欠落。羽毛の発育不全。若鳥ではそ嚢うっ滞、多尿、出血。ここまで悪化すると致死率が高い。抜けた羽軸の根元が黒いと要注意。 |
原因 | 繁殖場やショップでの水平感染。最近の説ではPBFDと同じサーコウイルスが原因とも言われる。 |
治療 | ワクチンはない。現状では栄養補給で体力の維持を図り、回復を待つしか方法がない。 |
予防 | 衛生管理の徹底。 |
病名 | レオウイルス病 |
症状 | 緑色下痢、食欲不振、やせる、肺炎、顔部の水腫。貧血、白血球の減少。肝臓や脾臓の腫大や壊死。さまざまな2次感染を招く。一見元気そうでも血液疾患などが進行している場合もある。ヨウムの幼鳥が感染しやすい。 |
原因 | 輸入前の繁殖場での感染が多い。 |
治療 | ワクチンは未開発。対症療法と栄養補給で回復を待つ。2次感染を防ぎ、体力の消耗を防ぐ。 |
予防 | 早期健康診断受診。衛生管理の徹底。新導入鳥の2週間以上の検疫隔離。ショップに入りたての幼鳥は迎えないこと。 |
病名 | PBFD(サーコウイルス病) 最近ではPCDに呼称が統一されつつある。 |
症状 | 羽毛の発育不全、羽の抜け落ち、羽毛の剛直・収縮、クチバシの変形、口蓋の潰瘍や壊死。慢性化では免疫不全。 大型インコ、特に白色オウムに多いが、ボウシインコ、モモイロインコ、ヨウム、ビセイインコ、オオハナインコ、コザクラインコ、セキセイインコなどにも組織病理学所見が見られると言う。5才以下の若鳥が感受性が高いが、10才以上の個体でも発症例はある。経過は急性・亜急性・慢性があり、急性のものは羽毛の症状が顕れる前に沈うつ、下痢、体重減少などを経て1〜2週間で死亡する場合もある(幼鳥に多い)。この場合、汎血球減少が見られファブリキウス嚢に組織病変が見られる。 亜急性では感染後2.3日で全身の羽が抜け落ちる場合がある。この際、抜けた羽軸中に血液が残っていることが多い。羽毛の黒色色素沈着も特徴的である。また羽のサヤが残っていることも特徴的である。白色オウム・ヨウムは急性の症状を示すことが多いとされる。このような場合、フケのようなサヤガラはたくさん出るが、粉状の脂粉が出なくなるのも特徴的である。胸部から腹部の震え、極端に臆病な傾向を示すことも報告されている。 亜急性・慢性症状は羽毛(まず脇腹や腹部などの羽毛から、やがて風切羽へと進む)の抜け落ち、カールした羽毛の異常成長、クチバシや爪の変形などを伴いながら免疫不全の徴候を示し、細菌や真菌性疾患にかかりやすい。敗血症・肺炎・肝炎・腸炎などを起こしやすく、致死率は非常に高い。多くの場合、発症後1〜3年後に斃死するとされる。 最近セキセイにも感染鳥が多くなっていると言われる。セキセイやヨウムの場合はクチバシよりも羽毛疾患が顕著であるとされる。ビタミンA過剰が発生に関与するとする説もある。またビタミンE,Kの欠乏が本疾患を悪化させるとも言われている。 今までに人間に感染し、発症した報告はない。 |
原因 | 脂粉やフンなどの空中浮遊物中のサーコウイルス吸引で感染。伝染力は強い。 |
治療 | アメリカの臨床検査機関に少量の血液もしくは羽毛を送ればアメリカ本国で検査してもらえるが、ワシントン条約の関係でなかなか検体が送れない。国内では一部の獣医師が検査をしており、開業獣医師経由で検査を受付けている。検査法は血清学的検査以外に病理組織学検査(異常羽毛細胞の細胞内封入体の検査)、病理学的検査(血液をDNAプローブ法でウイルスDNAを検出する)の合計3種の方法がある。ただし封入体検査はかなり末期にならなければ明らかにならない欠点があり、DNAプローブ法は抗体でなく抗原検査であるので、検査後に感染する可能性は否定できない。視診触診や通常の顕微鏡検査で発見することは有り得ない。 治療法は現在研究中。栄養補給、免疫力維持で2次感染の予防程度が今現在の対策。 過去さまざまな治療方法が試みられた。抗生物質の長期間投与、チロキシン等によるホルモン療法、亜鉛ほかのミネラル成分の補給、アガリクス茸などの漢方療法等。しかしどれも決定的な効果は得られていない。その他さまざまな免疫強化剤や肝機能賦活薬剤の投与も試みられていると言う。 近年、治療法の研究は確実に進んでいる。一日も早い効果的療法の確立が望まれる。 |
予防 | 現在のところ完全な予防法はない。日本でも白色オウムにかなり蔓延しつつある傾向が見られる。ボタンインコなどでも感染しているので楽観は許されない。オーストラリア北部の野生のキバタンでも20%程度の感染が報告されている。 衛生管理の徹底。新導入鳥の病理学検査で陰性と判定されるまでの検疫隔離により先住鳥の感染を防ぐ。ショップに入りたての幼鳥を迎えないことで危険を相対的に低下させる。飼い主は他の鳥に触れないほうが望ましい。 |
病名 | オウム病(クラミディア症)** クラミディアは大型ウイルスと分類されていたが、今はウイルス と細菌の中間として独立扱い。オウム病は別項参照のこと。 |
症状 | オウムだけでなくほとんどの鳥に感染する。元気消失、食欲不振、緑色下痢、羽毛を逆立てうずくまる。また鼻炎をおこして粘着質の鼻汁を出し、呼吸困難を起こすこともある。結膜炎が出る場合もある。人畜共通感染症の代表のように言われ、人間が感染すると悪性の感冒症状やチフス症状を示すことが多い。最近あまり耳にしないが、人間に発生例がないだけで、キャリアー鳥の数は非常に多いと言われる。輸入後2〜3週間で死亡する鳥の死因はたいていこの病気であるという説もある。 |
原因 | 主に乾燥したフンの飛沫を吸引することで感染する。感染力は強いがクラミディア自体は弱い。 |
治療 | オキシテトラサイクリンの筋肉注射が効果的。中型〜小型インコの場合はクロールテトラサイクリンを練り餌に混ぜて与える。 長期間の抗生物質投与となるので、真菌の繁殖を防ぐためにビタミン剤、抗真菌剤の投与を併用。 テトラサイクリンは金属容器と反応して毒性を示すことがあるので、非金属の餌入れが望ましい。 |
予防 | 衛生管理の徹底。「ペットリン」という粟玉にはテトラサイクリン系の抗生物質が添加されているので、これを3週間与えることは予防になるとされるが、大型インコには含有率が少なすぎる。(発売元では抗生剤の添加をやめているという情報もある)。またビタミンBの補給などの真菌症予防策を同時に行わなければならないため、素人療法をせずに獣医師に早めに任せるべきである。 病鳥は隔離。ケージおよび周辺の熱湯消毒。さらに逆性石鹸での洗浄が必要。 |
病名 | ニューカッスル病 |
症状 | 世界各国の多くの鳥種で発生が見られる。白色オウム、オカメインコ、ボウシインコ類は感受性が高い。重いカゼ症状(咳・クシャミ・下痢)を示し、やがて内臓各器官に機能不全が発生する。その後、運動失調・斜頚・頭部下垂・頭部痙攣などの神経症上が認められ、非常に高い確率で落鳥する。解剖検査では臓器に出血斑が見られる。 |
原因 | 世界各国の野生・ブリーダー・ペットショップ・動物園などで発生する。1979年南カリフォルニアで大発生があり、アメリカの養鶏業界に大打撃を与えた。また東南アジアの野生捕獲鳥でも近年感染個体が見られ、我が国の養鶏業界にも恐慌をもたらした。伝染は感染後2日目からウイルス排出が始まり、クシャミ・咳やフンの乾燥飛沫から空気感染する。感染したが発病しないキャリアーは1年間ウイルスを排出しつづける場合がある。ごくまれにヒトにも感染し顆粒結膜炎を起こすが日本では発生例は報告されていない。 |
治療 | 診断はウイルス分離で行われるが、受精鶏卵での培養をしなければならない。総排泄腔や咽頭のぬぐい液を血液凝集反応で診断し、陽性ならばその後培養検査する。効果的な治療法はない。 |
予防 | 潜伏期間は3〜16日なので、ショップに入荷した直後の鳥は求めないこと。ワクチンは効果的だが産業動物としての鶏にしか通常接種されない。新導入鳥の隔離は大切である。鶏の場合、感染が明確になった場合は「家畜伝染病予防法」により殺処分させられるが、養鶏産業保護のためやむをえない。同じ目的でインコでも処分が勧められるようである。 |
感染(症) | infection(infection disease) | 病原微生物が体内に侵入して増殖するのが感染。感染による病的状態が感染症 |
伝染病 | commounicable disease | 感染症の中で急速に伝播拡大し、社会的問題となる疾病。 |
顕性感染 | apparent infection | 発病を伴う感染発病を伴う感染 |
不顕性感染 | inapparent infection | 発病を伴なわない感染 |
持続感染 | persistent infection | 病原微生物が体内から排除されず、継続する感染 |
慢性感染 | chronic infection | 病原微生物が体内に長期間存在し、排出しつづける持続感染 |
潜伏感染 | latent infection | 病原微生物が検出しにくい持続感染しばしば再発を伴う |
遅発性感染 | slow infection | 数年以上の潜伏期後発病する持続感染 |
急性感染 | acute infection | 感染後短時日で発病する感染 |
日和見感染 | opportunistic infection | 感染防御力が低下している状態で、通常発病しない微生物に感染し発病をみること |
日和見 真菌感染 |
opportunistic mycotic inf. | 化学療法剤や抗生物質を長期間使用することで細菌類よりも真菌類が優位 となり、通常症状を示さない真菌類により発病を見ること |
全身感染 | systemic infection | 病原微生物が血液などを経由して全身に及ぶ感染 |
局所感染 | local infection | 特定組織に限定して病変を起こす感染 |
混合感染 | mixed infection | 2種以上の病原微生物の感染 |
二次感染 | secondary infection | 2種の混合感染で、感染時期にずれがある場合、後者の病原微生物の感染 |
重感染 | superinfection | 広域抗生物質の投与によって病原微生物が消滅後、新たな微生物による菌交代症 |
院内感染 | nosocomical infection | 病院内で起こる免疫低下した患者への感染 |
抗菌 スペクトル |
antibacterial spectrum | 抗生物質の効果が適用される菌種や菌群の範囲。テトラサイクリンのように 多くの微生物に有効な薬剤と、ナイスタシンなどように限定された薬剤があ る。前者を抗菌スペクトルが「広い」、後者を「狭い」と表現する。 |
グラム染色 | gram's stain | 細菌を大きく2分類できる染色法。クリスタル紫で着色し、その定着の差で、 分類する。色素が定着し紫黒色となるのを「グラム陽性菌」(ブドウ球菌など)、 脱色し赤色となるのが「グラム陰性菌」(大腸菌、サルモネラ菌など)と呼ばれる。 |
球菌・桿菌・ 螺旋菌 |
coccus/bacillus/spirillum | 細菌の形状による分類。それぞれ球状、棒状卵状、らせん状を呈する。螺旋菌 の中でもコンマ型のものを「ビブリオ」と呼ぶ。グラム染色とあわせ、「グラム陰性 桿菌」などと呼んで分類する |
封入体、 核内封入体 |
intranuclear inclusion body |
ある種のウイルスが細胞内で増殖すると特異的な染色性を持った構造物が認 められ、これを封入体と呼ぶ。ウイルス粒子の蓄積の場合と、二次的な細胞内 異常を示している場合がある。これが核内に存在するものを核内封入体と言い アデノウイルス、ヘルペスウイルスなどに見られる。 |
部位 | 正常細菌叢 | 非病原汚染 | 病原菌 | 病原菌 |
消化器・そ嚢 | アシドフィルス乳酸桿菌 Lactobacillus sp |
バシラス属 Bacillus sp |
大腸菌 Escherichia.coli |
酵母 |
連鎖球菌 Streptococcus sp |
真菌 | エンテロバクター Enterobacter |
サルモネラ Salmonella |
|
ミクロコッカス Micrococcus |
アクチノミセス属 Actinomyces |
クレブシエラ Klebsiella |
リステリア Listeria |
|
表皮ブドウ球菌 Staphylococcus.epidermidis |
ストレプトミセス放線菌 Streptomyces species |
シトロバクター Citrobacter |
エリシペロスリックス Erysipelothrix |
|
コリネバクテリウム放線菌 Corynebacterium sp |
エンテロバクター Enterobacter |
プロテウス Proteus |
マイコプラズマ Mycoplasma |
|
バシラス属 Bacillus sp |
グラム陰性桿菌の 低頻度存在は一過性 |
パスツレラ Pasteurella |
クラミジア Chlamydia |
|
大腸菌Escherichia.coli は 穀食鳥の正常細菌叢でない |
緑膿菌 Pseudomonas |
カンピロバクター Campylobacter |
||
黄色ブドウ球菌 Staphylococcus.aureus |
エルシニア Yersinia |
|||
副鼻腔 | アシドフィルス乳酸桿菌 Lactobacillus sp |
バシラス属 Bacillus sp |
すべての グラム陰性桿菌 |
リステリア Listeria |
連鎖球菌 Streptococcus sp |
真菌 | 黄色ブドウ球菌 Staphylococcus.aureus |
エリシペロスリックス Erysipelothrix |
|
ミクロコッカス Micrococcus |
アクチノミセス属 Actinomyces |
ある種の連鎖球菌 Streptococcus sp |
マイコプラズマ Mycoplasma |
|
表皮ブドウ球菌 Staphylococcus.epidermidis |
ストレプトミセス放線菌 Streptomyces species |
酵母および真菌 | クラミジア Chlamydia |
|
コリネバクテリウム放線菌 Corynebacterium sp |
エンテロバクター Enterobacter |
ヘモフィルス Haemophilus |
|
細菌名称 | 分類 | 病原性 | 治療 | 防疫 |
黄色ブドウ球菌 Staphylococcus.aureu |
グラム陽性 非運動性 |
敗血症、水泡性皮膚炎 関節炎、骨髄炎 |
カルベニシンや ゲンタマイシンの 早期適切投与 |
空気中に通常に存在している。 抵抗性も強い。衛生管理の徹底。 |
ある種の連鎖球菌 Streptococcus sp |
グラム陽性 | 敗血症、下痢、呼吸困難 不全麻痺、結膜炎 |
アンピシリンや エリスロマイシン の投与 |
正常常在細菌として存在。 日和見感染・発症。防疫困難。 |
エリシペロスリックス Erysipelothrix rhusiopathiae |
グラム陽性 非運動性桿菌 |
急性敗血症、突然死 | ペニシリンや テトラサイクリン の早期投与 |
土壌の消毒、 土との接触を避ける。 |
リステリア Listeria monocytogenes |
グラム陽性 運動性桿菌 |
斜頚、昏睡、麻痺 急性敗血症 |
テトラサイクリン の早期投与 |
いたるところに存在する。 消毒剤に弱いので適切に使用。 |
大腸菌 Escherichia.coli |
グラム陰性 運動性は多様 |
急性腸炎、鼻炎、気嚢炎 | 抗生物質投与 乳酸菌剤で腸内 正常細菌叢形成 |
いたるところに存在する。鳥と 接触前の手指の消毒。 |
サルモネラ Salmonella |
グラム陰性 桿菌 |
昏睡、食欲不振、 多飲多尿、結膜炎、 臓器肉芽腫、壊死 |
乳酸菌剤で腸内 正常細菌叢形成 |
定期的なケージ用具の消毒 餌のペレット化。 |
シトロバクター Citrobacter |
グラム陰性 桿菌 |
突然死 | 飲水への ネオマイシン投与 |
不明な点が多い。 |
エルシニア Yersinia pseudotuberculosis |
グラム陰性 卵形桿菌 |
運動障害、やせ、脱水 下痢、慢性では運動障害 肝臓・脾臓の腫大 |
不明 | 不明な点が多い。 |
パスツレラ Pasteurella gallinarum |
グラム陰性 非運動性 卵形桿菌 |
風邪症状、結膜炎、 呼吸困難、副鼻腔炎 |
スルホンアミドの 静脈注射 |
齧歯目動物との接触遮断。 |
ヘモフィルス Haemophilus paragallinarum |
グラム陰性 多形性桿菌 |
鼻汁、結膜炎、副鼻腔炎 気管支炎、気嚢炎 |
スルホンアミド投与 口腔の殺菌 |
塩化ベンザルコニウムでの消毒。 |
カンピロバクター Campylobacter jejuni |
グラム陰性 運動性桿菌 コンマ型、螺旋 型、S字型 |
急性肝炎 嗜眠、食欲不振、下痢 やせ、肝臓腫大 |
エリスロマイシンや テトラサイクリンの 投与 |
ケージ用具の定期的消毒。 各種殺菌剤は有効。 |
サルファ剤 | sulfa drugs | 化学療法剤スルホンアミド。球状細菌、グラム陰性細菌に有効とされる。市販薬トモジンの主成分で、気道炎や下痢症状などの際に使用される。長期連用時の副作用は腎臓障害など |
エリスロマイシン | erythromycin | グラム陽性菌に有効。マイコプラズマの治療に使用される。毒性は非常に弱いので、ペニシリンアレルギーの場合に用いられる |
アンピシリン | ampicillin | 最初に合成されたペニシリン。抗菌スペクトルが広い(作用する病原菌の種類・範囲が広い)ので、グラム陰性細菌全般、大腸菌、緑膿菌、インフルエンザなどに有効。スタフィロコッカス症にも使用される。原因不明の場合にも用いられるが、アレルギー反応が出る場合もある |
セファレキシン | cefalexin | セフェム系抗生物質でペニシリン耐性菌にも有効。副作用で下痢症状が出る場合もある |
タイロシン | tylosin | マクロイド系抗生物質。グラム陽性菌、リケッチア、大型ウイルスに効果的で、オウム病の治療にも使用される |
クロラムフェニコール | chloramphenicol | 水に難溶性の白〜黄白色結晶。抗菌スペクトルが広く、グラム陰性菌に強い作用を持つので細菌性下痢の治療に用いられるが、毒性が強く、肝臓疾患、再生不良性貧血などの副作用の可能性がある |
アモキシシリン | amoxicillin | 抗菌スペクトルの広い抗生物質。グラム陽性菌にも陰性菌にも効果的。大腸菌、インフルエンザ、ブドウ球菌などに有効なため、菌が同定されない場合使用されることもあるが、慎重な処方が望ましい |
ニトロフラール | nitrofural | 黄色結晶粉末で難溶性。グラム陽性・陰性菌に広く作用する。連用は発ガン性がある |
スペクチノマイシン | spectinomycin | グラム陰性菌に強く作用し、敗血症の治療に注射薬で用いられる。副作用は明確にされていないが、注射時の痛みが強く、アレルギー反応が出る場合もある |
テトラサイクリン | tetracycline | 苦みのある黄色の難溶性結晶粉末。広い抗菌スペクトルを示し、連鎖球菌、ブドウ球菌、大腸菌などに作用する。最も普通に処方される抗生物質である金属と反応すると毒性を示す場合もあるので要注意 |
ナイスタチン | nystatin | 抗真菌作用をする抗生物質。カンジダ症の治療に用いられる、黄色の粉末で水に難溶性の薬剤。よく振って投薬しないと沈殿する |
アムホテリシンB | amphotericin B | 抗真菌作用を持つ抗生物質。細菌やウイルスには無効。アスペルギルス症の治療に用いられるが、消化管からの吸収が悪い。副作用は腎臓機能障害。シロップ剤もある。 |
メトロニダゾール | metronidazole | 乳白色または微黄色の結晶粉末で水溶性。トリコモナス症の治療に用いられる駆虫剤 |
ピペラジン類 | piperazines | 非常に強い駆虫力を持つ薬剤。比較的大型の寄生虫を麻痺させ、糞とともに体外に排出させるとされる |
アンプロリウム | amprolium | 水溶性の結晶粉末。コクシジウム原虫の駆除に用いられる |
抗生物質は病原性微生物に対して強い作用を及ぼし、病気を治してくれるものですが、注意しなければならないのは目的の微生物を正しく判別(同定)しなければ、無意味な投与になってしまうことです。つまり薬剤の種類が目的の病原性微生物に限って効力を発揮するのです。「抗菌スペクトルの広い」つまり効果の範囲の広いものもありますが、不適切な抗生物質の使用は逆効果となることも理解しておいてください。抗生物質の作用は次の2つに大別されます。
殺菌作用 | 細胞壁合成の阻止等で 微生物を殺滅する 細胞壁のないクラミジアには無効 |
ペニシリン系、セフェム系など |
静菌作用 | 蛋白質合成に異常を生じさせ 微生物の増殖を停止させる その間に宿主の自然治癒力で 微生物を殺滅・排除する |
マクロライド系、テトラサイクリン系、 クロラムフェニコール系など |
殺菌作用は理解しやすいと思いますが、静菌作用というのは微生物を殺すのではなく変異体にさせて増殖を阻止し、その間に宿主(被感染者)の免疫力や自然治癒力(白血球の働きなど)で微生物を排除するものです。そのため劇的な効果はなく、比較的長期間の投与が必要になるため、真菌症の発生などの副作用もありますので、腸内細菌叢の維持のためにビタミン剤や「多剤耐性ラクトバシラス・アシドフィルス菌」などの耐性乳酸菌製剤を併せて服用する必要があります。鳥に一般的に処方される抗生物質は静菌作用のテトラサイクリン系が多いため、こうした配慮が必要になります。
動物用医薬品は中央薬事審議会において厳正な審議が行われ、効果と安全性が確認された製剤のみが農水大臣により承認されます。動物別の薬品については「農水省動物医薬品検査所」のHPを参照すると良いでしょう。http://www.nval.go.jp/です。トモジンネオについても触れられています。また、飼料も含めて研究・検査を行っている「科学飼料研究センター」のHPも参考になります。http://kashikyo.lin.go.jp/です。ただし動物病院では、上記に挙げた抗生物質などのほとんどはヒト用の医薬品の錠剤を乳鉢ですりつぶして粉にしたものを用いることが多いようです。鳥用の薬品が出来合いのパッケージでなく、ヒト用では今は珍しい薬包で渡されるのはそのためです。ヒト用の薬品は効果が十分研究されているために、獣医師の先生も安心して処方するのです。しかし素人が勝手にヒト用の薬品を鳥に投与することは絶対にやめましょう。整腸剤ビオフェルミンSや正露丸を20分の1与えることなどがよく行われているようですが、危険と隣り合わせであることを覚悟し
てください。(ビオフェルミンSは3種「ビフィズス菌」「フェーカリス菌」「アシドフィルス菌」の乳酸菌剤で、化学製剤は含んでいないため危険はないと思いますが、安易な投与は避けるべきでしょう。)
市販鳥用医薬品「トモジン−ネオ」について
かつては鳥用の医薬品(弱い抗生物質など)が、かなり自由に販売されていました。しかし法的規制(動物用医薬品等取締規則・農水令)によるものなのか、単に需要が減ったためなのかは不明ですが、現在一般に購入できる薬品らしい薬品は、現代製薬の「トモジン−ネオ」だけです。「気管支炎・細菌性下痢」に効果を発揮するという、たいへんウレシイ効能書が入っていますが、果たしてその効き目のほどは・・・?結論として、「市販薬品としてはかなりの効果が期待できる」と思います。なにしろ「サルファ剤」が入っています。これは獣医師も処方する化学療法剤です。「トモジン−ネオ」の成分は次のとおりです。(内容量は100gあたり)
スルファジメトキシン | 1.5g | もっともよく使われるサルファ剤。ピリミジン核を有し、各種細菌、コクシジウムに有効とされる |
スルファメラジンナトリウム | 1.5g | 大腸菌、連鎖球菌、ブドウ球菌、インフルエンザ菌、コクシジウムなどに強く作用するサルファ剤 |
パンクレアチン | 4.0g | アミラーゼ・プロテアーゼ・リパーゼなどの酵素を含み、消化を促進する |
ジアスターゼ | 14.0g | 人間にも普通に用いられる消化剤。特にデンプンの消化に効果のある酵素剤 |
ブドウ糖および乳糖 | 79.0g | エネルギー補給と整腸作用を目的としている。甘く飲みやすくする効果と賦形が主眼 |
注意すべきは与え方と量です。大型インコの場合は説明書に書かれた1日あたりの最大量0.7gを与えるべきです。飲み水に混入したのでは効果的な摂取ができませんので、バナナなどにまぶしたり、フォーミュラ団子に混ぜ込んで、1日量を2〜3回に分けて与え、確実に摂取させます。添付スプーン山盛りで0.1gですから、朝夕なら1回3.5杯与えることになります。薄い化学療法剤の長期連用は真菌症の誘因となりますので、短期決戦(とは言っても、当然ながら規定量を上回ってはいけません)です。1ビン5日分ですので、これで改善が見られなければ、迷わず動物病院へ!
*このぺージは、あくまでも素人飼育家の知識として紹介したものです。薬剤名も紹介したのは「治せる病気は治して欲しい」と願ったからです。獣医師以外の方が生半可な知識で薬剤を投与することは絶対に避けましょう。