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  インコの器官と疾病

インコと限らず鳥は空を飛翔するために独特の進化を遂げ、すべての器官が「飛ぶために」に作られていると言って過言ではありません。そのためヒトのような哺乳類と異なる器官を持ち、独特の疾病が生じます。

骨格系呼吸器系消化器系泌尿器生殖器系その他の特徴的器官感覚器官

骨格系

鳥は空中を飛翔することが特徴であり、その特殊能力を十分に発揮させるためにさまざまな特徴が生まれました。飛ぶためには「動力」と「構造」そして「軽量」がポイントになるのは飛行機と同じです。

インコの骨の断面図

動力
「動力」としては強力な大胸筋がその役目を果たしています。またその強い大胸筋を支える骨格である竜骨突起が哺乳類に見られない特徴的なものです。ギリシア神話でイカロスがロウで翼を作って飛翔した話が登場しますが、どんなに巧妙な翼システムを作ったとしても、ヒトの腕の筋力ではとても飛ぶことはできません。鳥の大胸筋は全体重の4分の1を占めると言われます。ちなみにヒトで最も発達しているのはお尻の大殿筋で、これが2足歩行という、他の動物にない特徴を支えています。
構造
「構造」は翼・羽があることです。こう言えば簡単ですが、羽はイカロスのロウ細工と違って実に巧妙にできており、例えば風を切って空気を後ろに押し出すときには羽は一枚状態にピッタリくっついて強力な推進力を作り出し、逆に羽を前に戻すときは羽の間を開けて空気抵抗を減らします。ちょうどボートをこぐときに、推進時は水中でグイッとかき、オールを戻すときは空中を軽くまわすのと同じような原理です。他にも羽には驚嘆するような複雑な仕組みが備わっているのです。なお飛行機では垂直尾翼が方向転換のはたらきをしますが、鳥の尾羽は着陸時に落下速度を低下させる、パラシュートの役目を担っています。
 こうした機能を十分に発揮させるために、鳥たちは常に羽づくろいをして、整備に余念がありません。 構造の第2点目は温度調節システムつまりラジエターです。鳥は緊急時にすぐに飛びたてるように、常に「ウオーミングアップ」状態にあります。体温がヒトと比較してかなり高い40〜42℃もあるのはそのためです。当然保温が大切になってきます。一方、飛翔という重労働をすれば当然体温が上昇します。先祖が同じ爬虫類のようなウロコで体表が覆われていたら、たちまちオーバーヒートしてしまいます。この保温と冷却の両方の効果を発揮するのが羽毛(綿羽・半綿羽)です。羽毛布団は高価ながらも愛用者が多いのは、軽い上に冬暖かく夏涼しい、この両方の効果を発揮するからです。なお、オウムなどで「脂粉」と呼ばれる細かな白い粉が出ますが、これは若い羽毛を包むケラチン物質で、これが落ちると通常の綿羽になると言われます。脂粉の役割は羽毛間の接着であるとか、防水効果であるとか、さまざまな効能が言われていますが、はっきりしていません。
軽量
「軽量」の一番の特徴は骨のほとんどが中空であることです。中空と言ってもストローのようなわけではなく、細かな柱が無数にあって強度を支えています。抜群の空中運動性を誇ったゼロ戦の構造体が穴だらけで軽量化を図ったのと同じ理屈です。またゼロ戦がそうであったように鳥の骨は弱く、骨折しやすく、そのかわり回復力はヒトよりかなり早く効率的になっています。

骨格に関わる疾病

骨折
一番多いのが骨折です。しかし鳥の外傷に対する抵抗力と回復力はすばらしいものがあります。体内を矢が貫通したカモが、仲間と自由に飛んでいた映像がありましたが、そのようにヒトでは考えられないほどの外傷抵抗性があります。
 骨折の治療は副え木をしてテーピングすることです。副え木は厚い段ボールやプラスチック板などを用います。複雑骨折で開口部がある場合は感染症が心配なので、かならず獣医師に処置をお願いしましょう。
 上記のように鳥の骨は中空で骨折しやすいのですが、換羽期にはカルシウムが羽毛形成にまわるために特に骨格が弱体化しやすいと言われます。予防のためにはカルシウムとビタミンD3の補給、カルシウムとリンの適正バランスを図ることが大切です。
脱臼
羽をクリップしている鳥の場合、高所から落下した場合に趾や膝関節を脱臼することがあります。骨折という形になることが多く脱臼はあまり発生しませんが、骨折よりもテーピング処置がしにくく炎症も発生するため、獣医師に任せた方が良いでしょう。
クル病
「栄養性脚弱症」と同様です。カルシウム・ビタミンD3の不足、カルシウム:リン比の不適正等で発生すると考えられます。脚が曲がったり、伸びたままになったりするのが代表的症状ですが、体中の骨格で発生する可能性があります。クチバシが柔らかくなる症状もあります。


呼吸器系

呼吸運動

鳥の呼吸器系の特徴は「気嚢」の存在です。飛翔という重労働は肺だけでは酸素の供給が追いつかないほどのものです。そこで空気の貯蔵庫「気嚢」が必要となったのです。これによって、絶え間なく肺に空気が供給されるため、長時間休みなく飛び続けることができるのです。また汗をかかない鳥たちは、この気嚢を通して排熱します。羽毛と共にラジエターの働きもするわけです。また、魚の浮き袋のように浮力向上に役立っているのではないかという説もあるますが、その効果は十分に解明されていません。気嚢の構造は複雑で、体内の各部のすきまに細かく分かれて入り込んでいます。病気が「気嚢炎」になると治りにくいと言われるのは、こうした複雑な形状によるものです。

 左の図を見てください。鳥の呼吸器官は哺乳類とは全く違う構造をしています。ヒトの呼吸器官は口・鼻孔から気管を通って肺に達し、ここで酸素と二酸化炭素のガス交換が行われて、再び気管を通って排出される、単純な構造です。
ところが鳥では非常に複雑です。体中、それこそ「含気骨」と呼ばれる骨の中にまで空気が行き渡ります。これは、
(1)飛翔という超過激運動を維持継続させるために多量のガス交換が必要
(2)中空構造にして浮力を維持させる
などが理由として考えられますが、現在ではほぼ(1)の理由だけと考えられています。
 ちなみに呼吸運動はほとんど後胸気嚢の伸縮がポンプの役割を果たし、他の気嚢や肺はほとんど拡縮しないと言われます(左下アニメ参照)このポンプ作用により鳥は呼気吸気両方の動作で休みなくガス交換(酸素を取り入れ二酸化炭素を排出)するとも言われますが、これには異論もあるようです。

 さてこれだけ複雑な呼吸器官であるため、ひとたび病原性微生物が侵入すると、体内隅々まで菌が行き渡ってしまいます。ですから一見治癒したようでも、思わぬところに菌が残っていたりするのです。これが「鳥の呼吸器疾患は治癒しにくい」ということです。慢性化しやすいのは事実です。
 特にヒトの風邪と違うところは、眼窩下洞・副鼻腔の炎症が多いと言うことです。頭部の藤色で図示した部分がこれにあたります。ここで鼻汁(膿)がたまったりした場合、眼球を中から押し出すため、眼やその周囲が飛び出したようになります。眼が飛び出て涙目になっていたりしますと、眼病ではないかと考えがちですが、大概の場合、副鼻腔炎であることが多いようです。また炎症が耳の方にまで発展すると、鼻汁ならぬ耳汁を分泌します。これらはヒトに見られない症状なので、大いに驚かされます。

 こうした複雑さから、効果的に薬剤を体内に行き渡らせるために「ネブライザ」と呼ばれる全身吸入器が用いられるのです。ネブライザについては「医」コーナーのネブライザの項目を参照してください。
 ただ、ネブライザは被毛に薬剤が付着するデメリットが大きい割に薬剤吸入効果が低いという考え方をされる獣医師もいます。難しいところです。

呼吸器系にかかわる疾病

鼻炎
いわゆる「鼻カゼ」で、クシャミ・鼻水などが見られます。鼻汁が水のようであれば温度変化による生理作用の一種で、保温などで用意に改善されますが、青っ洟(膿状の鼻汁)は細菌感染を示していますので、適切な投薬治療が必要になります。まぶたが赤く腫れたりする「鼻眼結膜炎」の症状に進行することもあります。
副鼻腔炎(洞炎)
鼻炎から発展してしまったもので、呼吸のたびに異音がしてきます。原因微生物によって症状も治療法も様々なので、獣医師の診断・治療にお任せした方が良いでしょう。「様子を見る」ことは事態を確実に悪化させると考えてください。
甲状腺腫
呼吸器系器官ではありませんが、甲状腺が腫れると気道を圧迫して呼吸困難の症状を示します。ヨードの補給で治癒しますので、異常な呼吸音がしているときは、甲状腺の異常の可能性も考えてください。
腹水
クシャミや咳などの呼吸器系疾患症状を示していても、実は腹水であることもあります。これは肝臓機能障害や卵管炎、慢性気道炎などが原因で腹腔内に体液がたまる疾病です。特定の器官(たとえば消化器)が水膨れするのではなく、臓器の収まっている身体内部に体液がたまるもので、投薬治療や穿刺(注射器で物理的に腹水を吸引)治療が必要となります。
気嚢破裂
打撲など物理的なショックで気嚢が破れ、空気が皮下にたまって膨らむものです。喉あたりが風船のように膨らみ、呼吸のたびに動きます。鳥の気嚢は体中にあるため、必ずしも喉だけでなく腿など意外なところで発生することがあります。穿刺で空気を抜く治療が必要です。慢性化しやすいようです。


消化器系

これも「飛ぶため」の一環とも言えるのですが、鳥の消化器・泌尿器系は、常に軽量化を図ったシステム構成になっています。その最も特徴的であるのは膀胱がないことと、こまめに排泄をすることです。では上から下まで見てみましょう。

歯がありません。唾液は分泌しますが、消化能力にはあまり影響を与えず、水分添加が主な働きと言われます。
食道
口から胃までをつなぐ管で、途中に「そ嚢」があります。
そ嚢
食道が袋状になった部分で、「餌袋」とも呼ばれます。単なる餌の滞留袋であって、消化吸収にかかわる作用はしないとされますが、穀類をふやかす作用をしているとも言われます。湿気と温度が微生物の繁殖を誘発しやすく、炎症を起こしやすい器官です。
腺胃
鳥の胃は前胃と後胃にわかれます。前胃は「腺胃」とも言われ、胃液(酸とペプシン)を分泌して、餌と混合して後胃に送ります。吐き戻しする餌は、前胃で作られ、吐き戻されます。
筋胃
後胃は「筋胃」「砂嚢」「砂肝」などとも呼ばれます。強い筋肉で囲まれ、ここで化学的な消化が行われます。ここにはケラチン質の堅い部分があって粒餌をすりつぶします。またグリットと呼ばれる鉱物質が貯えられ、これを利用して堅い穀物餌を粉砕します。このため穀食鳥では非常に強力であるのに対し、果食鳥ではあまり発達していません。
小腸・膵臓・肝臓
膵臓が生産した膵液と肝臓が生産した胆汁が分泌され、これらを利用して小腸で化学的消化と吸収が行われます。インコ類では胆嚢がない種類もあります。膵臓はループ状の十二指腸に挟まれた形になっています。肝臓はヒト同様最大の臓器で2葉あります。
大腸
鳥の大腸は非常に短いものです。排泄物を貯えて重量が増加することを避けるためです。鳥は消化吸収を終えた残留物はただちに糞として排泄されます。
盲腸
オウム目の鳥は盲腸は痕跡程度しかありません。「ない」と言っても良いでしょう。ニワトリなどは大きな盲腸を持ち、その中に有用微生物を繁殖させて体内生理に良い影響を与えているようです。家禽解剖図などとオウム目の構造は全く異なるので注意が必要です。
総排泄腔
大腸から直腸を経て総排泄腔につながります。ここで泌尿器系と生殖器系と一体となって肛門から外部へ排泄されます。なお、若鳥では総排泄腔の背部に「ファブリシウス嚢」という部分があります。

消化器系にかかわる疾病

そ嚢炎
そ嚢は湿度・温度が高く、胃のような強酸性でもないため、細菌・真菌・原虫が繁殖しやすい器官です。定期検診で「そ嚢液検査」を受けるようにしましょう。なまあくび、嘔吐(特に悪臭)、飲水量の急増などの症状が現れます。そ嚢結石の場合もありますが、この場合は切開手術が必要になります。。
食滞
そ嚢に餌がたまりすぎ、水分だけ胃に降りて、そ嚢内部には餌が固まったようになってしまう現象です。飲水量の不足や飼料の不適正、幼鳥の差し餌しすぎ、ボレー粉や塩土の食べ過ぎ、環境や気候変化等で発生します。前胸部が腫れ、食欲が低下し、衰弱します。幼鳥の場合は生命の危険もあります。
腸炎
腐敗した食餌、さまざまな病原性微生物が原因で発生します。膨羽嗜眠、下痢などの症状が出ます。原因により治療法は全く異なりますので、まず保温に努めて急いで獣医師の診断治療を受けましょう。
膵臓疾患
多飲多尿が多く見られる内分泌異常です。鳥の血糖値はヒトの3倍程度もありますが、膵臓疾患の場合はさらに通常時の3倍にもなります。多飲多尿が続くようならば血液検査を受けた方が良いかもしれません。治療にはインシュリンなどの特殊な方法を必要とします。
肝臓疾患
栄養性・代謝性の異常、様々な病原性微生物が原因となって発生します。尿の色が濃黄色になるのが特徴です。オウム病の症状の一つでもありますので、「おかしい」と感じた時点で獣医師の診断に任せましょう。
脱肛
下痢が長期間におよぶと、肛門から直腸が出てきてしまう場合があります。肛門から赤い玉が飛び出ているように見えます。放置すると壊死したり、自分でつついて出血することがあります。抗生物質軟膏を塗布した綿棒で物理的に体内に戻しますが、獣医師に任せるべきでしょう。
異物嚥下
手乗り鳥に多い事故です。原因は飼い主の不注意に帰結します。排泄・嘔吐で自然に排出することもありますが、尖ったものなどは体内に刺さったりして開腹手術が必要にもなります。放鳥時は万全の監視体制を確保するようにしてください。


泌尿器生殖器系

腎臓
ヒト同様に左右1対ありますが、他の器官と比べてかなり大きいものです。動脈から分かれた毛細血管が運んできた老廃物を「ネフロン」で濾し取り、静脈に血液を戻すという機能・構造はほぼヒト同様ですが、鳥には腎盂がありません。
尿管
腎臓で濾し取られた尿は尿管を経て総排泄腔へ排泄されます。鳥の尿はヒトと異なり尿素ではなく尿酸という固体で、フンの中の白い部分が尿にあたります。
メスの生殖器
ほとんどすべての鳥は左側の卵巣だけが発達しています。卵管は卵巣と総排泄腔をつなぐ管です。非繁殖期には意図のように萎縮し、繁殖期になると卵巣からのホルモン(エストロゲンなど)の作用で太くなります。卵巣から排卵された卵は漏斗状の「卵管釆」から卵管に入ります。卵管は上部から機能別に「卵白分泌部」「峡部」「子宮部」「膣部」に分類されます。鳥には独立部位としての子宮がなく、卵管の下部がそれに当たります。この部位では卵殻成分(アルブミンや石灰質)を分泌する腺があり、そこまで柔らかかった卵が堅い卵殻を持つ卵になります。
オスの生殖器
一対の精巣と精管からなっています。繁殖期には光や温湿度、栄養状態その他の理由で精巣が大きくなり、精巣間質からホルモン(アンドロゲン)を分泌します。精管はクネクネとしながら総排泄腔につながっています。射精は精管周囲の筋肉の収縮によっておきます。

泌尿器生殖器にかかわる疾病

腎炎
ヒトの食べ物や塩土の食べ過ぎなどが原因で発生することが多く、多飲多尿、逆に飲水量急減、趾のがさつき(脱水症状)、食欲不振などさまざまな慢性症状を示します。血液検査で尿酸値、クレアチン値の上昇などが見られる場合、腎臓疾患の可能性が高いと言えます。低タンパク食やビタミンAやB群を与え、利尿剤を投与しますが、これも獣医師に任せます。
痛風
内臓型と関節型があります。腎臓機能異常、血液中の尿酸値の上昇が原因で発生しますが、内臓型の場合は気が付かずに進行して突然落鳥する事になってしまいます。しかし一般的には関節型が多く、止まり木に止まらない状態からやがて趾の関節に黄色い腫れ物が現れます。外科的手術よりも適正な食餌療法が効果的と言われます。タンパク質(特に動物性)の摂取過剰は痛風になりやすい傾向があります。
卵秘(卵詰まり)
卵が卵管に詰まってしまうもので、産卵期のメスが食欲なくうずくまるような状態を示したら、まず疑わなければいけません。高齢また未成熟での産卵、ビタミンやヨードの不足などさまざまな原因が指摘されていますが、低温下での巣引きでの発生が非常に多いことが言えます。気温急変期や冬季の巣引きは避けましょう。発生しやすい割に致命的であることもあり、バカにできない疾病です。カルシウムの不足や産卵過多で卵殻が十分に形成されない「軟卵」になると詰まりやすい傾向があります。上手に卵を取り出すのには熟練が必要で素人が下手にやると卵殻を割って卵管を傷つける可能性が高いので、熟練した獣医師に任せましょう。肛門からのオリーブ油注入やアンモニアを嗅がせるなどの民間療法はオススメできません。
卵管炎
ホルモン異常や細菌感染などから発生します。濃緑色下痢をし、うずくまって動作が緩慢になります。産卵が異常に多い鳥に起きやすい疾病で、治療には病原検索の結果から選定した薬剤投与が必要になります。腹水が溜まることがあります。卵が詰まって腐敗する病気ではなく、ホルモン異常や細菌の感染が原因です。卵管の中に膿が溜まり、卵黄と共に膨らみ、あたかも卵ができたようになる場合と、卵黄はなく白いチーズかすのようなものが卵管に長く溜まり、条虫のように細長く肛門から出てくる場合があります。卵があるように下腹部が膨らみ、数週間もそのままの場合は卵管炎の疑いが濃厚です。
卵性腹膜炎
卵巣から排卵された卵が卵管に入らず、腹腔内に出てしまった場合に発生します。また卵管破裂で、途中から卵が腹腔内に逸脱してしまうことが原因になることもあります。腹腔内が卵黄状の物質で満たされて腐敗する可能性があります。早期ならば開腹手術で充満物質を除去しますが、悪化した後は抗生剤投与になります。これは充満物質の自然吸収を待つものです。とても素人の手に負えない重篤な疾病です。

過剰産卵の抑制

産卵行動は性成熟したメスの通常の生理ですが、毎月のように産卵することは母鳥の身体に大きな負担を与えてしまいます。そこで過剰な産卵の抑制が必要になります。

  1. 巣引き時期以外はケージに巣箱を絶対に入れない、巣箱を連想させるものはすべて禁物
  2. 畳んだ布、家具の隙間など「巣」を連想させるものに近づかせない
  3. 背中を撫でるなど後尾刺激になる動作はしない
  4. 人通りの激しい落ち着けない場所にケージを移動させる、軽いストレスを与える
  5. ケージから出す時間を決めることで、部屋全体が自分の「巣」だと思うことを防止する
  6. 産卵したら卵を取り出さない1週間程度は抱卵させてから一挙に取り出す

以上のことが通常言われる産卵抑制の方法です。母性本能などは個体差が大きいので、かならずしも同じ方法が一定の成果を得られるとは限りませんが、すべてを試みるべきでしょう。
 通常の場合はオススメできませんが、卵管炎を起こしやすい鳥の場合は外科的手術やホルモン剤投与で抑制します。前者は卵管を切除してしまう手術です。即効的効果がありますが非常に微妙な手練を必要とするため、よほど慣れた獣医師でないとお願いできないと思います。後者はプロゲステロンやテストステロン誘導ホルモンの注射などで産卵行動を抑制するものですが、これは長期間の効果は期待できません。あまりにも頻繁な産卵が目に付いた場合のみ対処措置として行うものでしょう。
 何にせよ産卵はメスの通常生理であることを理解し、無理なことは避けてください。ただし産卵時期のカルシウムとビタミンD3の積極的な補給は欠かせません。


その他の特徴的器官

気管と鳴管
鳥の気管の入口は舌の付け根、食道入口の手前にあります。このため食物などの異物が入りやすい構造になっています。気管はリング状の軟骨に囲まれていて、ちょうどフレキシブル管のように見えます。気管支には鳴管があり、ここで膜を振動させて鳴き声を発生させます。
羽脂腺
腰の上部にあり、脂成分の物質を分泌します。これを羽づくろいで体中に行き渡らせて防水効果を発揮します。ヒナの時期にはあまり発達していません。またボウシインコは未発達、オカメインコやバタン(白色オウム)類も、あまり発達していないとも言われています。「尾脂腺」とも呼ばれます。
瞬膜
眼球を覆う瞼(まぶた)の下に瞬膜と呼ばれる薄い膜があり、これが角膜を湿潤に保っています。
脚の構造
動物で2足歩行するのはヒトと鳥です。しかしその構造は大きく異なります。人間は直立していますが、鳥は「つま先立ちの前傾姿勢」で立っています。そのため鳥はヒトとは違って腰痛とは無縁です。
羽毛
羽毛は鳥の特徴であり、体重の10%を占めると言われています。羽毛は綿羽(いわゆるダウン)と正羽(いわゆるフェザー)に大別され、それぞれ綿羽は綿羽(皮膚に最も近いところに生える下羽で保温用)・半綿羽(腿の部分の綿羽)、正羽は体羽(体の表面を覆い、水をはじく働きをする)・風切羽(飛翔するための主翼)、に分類されます。羽毛はトリノからだすべての表面に生えているのではなく、胸〜腹部中央、股の付け根あたりは無毛部(無羽部)と呼ばれて通常はダウンも生えていません。これは抱卵の際に効率よく熱を卵に伝えるためのものと言われています。
羽毛の種類 有毛部と無毛部


鳥の感覚器官

はるか昔、海中で生まれた生命は進化を遂げ、いくつかの集団が陸上での生活を選んで海から上陸しました。その後、おそらく両生類や爬虫類的な身体構造・機能を経て、2種類の高等動物へと進化しました。それが哺乳類と鳥類です。
この2種は生活空間を分け合うことで、現在まで地球上で共存してきました。その住み分け生活の中で、からだの各器官や感覚に相違が生まれてきたと考えられています。
 哺乳類は陸上での生活を選び、さらに主な活動時間を夜の時間帯に設定して「夜の帝王」となりました。夜行性という生活は哺乳類の感覚器官に独特の発達をもたらしました。闇夜で活動するために視力は弱く、また色覚もあまり発達しませんでした。そのかわりに夜でも有効な嗅覚と聴覚が鋭敏になりました。体色も夜ではあまり意味を持たないため、色素は黒色メラ二ンのみしか存在しません。ですから哺乳類の体色は白〜茶〜黒で、真っ赤なイヌや緑色のネコなどは考えられません。
一方、「昼の王者」となったのが鳥類です。そのために何より視覚が高度に発達しました。獲物も敵も目で認識し、行動に移るのです。また色覚も、哺乳類であるヒト以上に発達していると言われています。そのかわり哺乳類とは逆に、嗅覚はあまり発達していないようです。体色は各種の色素によりカラフルで、赤青黄色、保護色・警戒色・ディスプレイ表現と、「色」の効果を最大限に発揮しています。
 ここで、もう少し詳しく鳥の感覚器官の性能を見てみましょう。

視覚
鳥の網膜には5種類の視覚細胞があり、非常に発達していると言われています。
 鳥の視力をヒトの視力検査と同列に比較するのは難しいのですが、一般的には鳥の視力はヒトの3〜4倍、ワシやタカなどの猛禽類は25倍にもなると言われています。また高速で移動する鳥は動体視力もヒトとは比較にならないほど発達していると考えられています。
 一般に鳥は「鳥目」とされ、夜行性のフクロウなどを除いて夜間視力に欠けると思われがちですが、昼行性の渡り鳥でも夜間には星座の光を頼りに飛び続けるとされますから、鳥=鳥目、とは言えません。鳥目という言葉があるのは、身近なニワトリがそうだからでしょう。鳥の色覚はヒトよりも優れていると言われますが、可視光線のどこまでを分別できるのか、紫外線は識別できるのか、細かな部分については研究がなされておらず、正確なところはわかりません。ですが、特定の色の洋服を着て接すると恐がったり、派手な色彩のオモチャを怖がるといった事実はありますから、色覚があることだけは確かです。   鳥の目は顔の左右についている種類と、両目とも顔の前面についている種類がいます。前者は、敵から逃げることを重視した「防衛型」で、インコ類は330度の視界を持っていると言われます。首を180度近く回せることをあわせますと、ほぼ周囲全体を見ることができると考えられます。一方後者は獲物を捕獲することを重視した「攻撃型」で、猛禽類のほとんどがこの型です。焦点が合わせやすく、狭く深く凝視するタイプと言えるでしょう。手乗り鳥は「防衛型」です。 ヒトはおどかすようなことをせず、可愛がってあげなければいけないのは、この目の位置からもわかります。
聴覚
鳥には「耳介(耳たぶ)」がありませんので「鳥に耳があるの?」とまで勘違いする方もいるほどですが、当然ながら耳はあり、耳の穴の上は「耳羽(じう)」という、周囲と違った形の羽毛でカバーされています。
聴力については正確なデータがありませんが、仲間との連絡に独特の「地鳴き」を使うなど、特定の周波数に敏感に反応するようですから、ヒト程度には発達していると考えられます。手乗り鳥が飼い主の声を識別したり、ものまね鳥が正確にヒトの声をまねるのは、幼いうちから接する音(声)に慣れ親しんで、その周波数帯に敏感になるのかもしれません。
声の大小は生息地の環境によると言われます。視界の開けた草原に住む鳥は比較的小声で、視界の利かないジャングルで生活している鳥(オウムなど)は、必然的に大声になると考えられています。
味覚
鳥の舌には「味蕾(みらい)」が少なく、口蓋や喉の基部などに味覚細胞が存在しています。味蕾が少ないため、鳥の味覚は人よりも乏しいと言う説もありますが、現実には甘いものを好む傾向がありますし、食べ物にかなりうるさい好みがあることを考えると、味覚も相当発達していると考えられます。ただし口腔内部の痛点は鈍感であるようで、オウムがトウガラシを丸かじりしている姿には驚かされます。
嗅覚
一般的には鳥の嗅覚は劣っていると言われますが、十分な研究データはありません。一部の猛禽類では発達しているものもあるようですし、手乗り鳥でも、同じように甘いシロップ栄養剤なのに「ニンニクエキス入り」は好まない一方、「ショウガエキス入り」は好む、などの様子を見るにつけ、案外と嗅覚も発達しているのではないかと思われます。
第六感
これは「感覚」とは言えませんが、「地震が来る前に騒ぐ」などの例が報告されています。自然界の野鳥にはそのような傾向があることは、古くから言われています。微妙な地磁気の変化であるとか空中の電気の変化を感じ取るのだなど、さまざまに推測されていますが、正確にはわかりません。ただしヒトとの生活になじんだ手乗り鳥は、この感覚が鈍くなっていることは事実のようで、地震予知どころか、発生後にパニックになってケガをしてしまう鳥も多いようです。このことからも、手乗り鳥として育てた鳥は、ヒトが十分に保護してあげなくてはいけないことがわかります。