飼鳥情報センター 

  地球からの預かりもの −コンパニオンバードと法律−

私たちが家族の一員として暮らす、コンパニオンバードにはさまざまな法律がからんできます。
ここでは、その概略を知っていただき、法律が生まれた背景を考えたいものです。
こうした面からも、地球からの大切な預かりものである鳥たちへの愛情を一層深めていただきたいと思います。


ワシントン条約 (CITES・サイテス)

 正式名称は「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」。条約が発効したのは1975年で、日本は1980年に加盟しました。

  この条約は、無制限な
商業取引が野生生物の種の生存にとって大きな脅威になっているという認識から、絶滅のおそれのある野生生物とその製品の国際取引を規制することを直接の目的としています。 条約には、付属書T、U、Vがあり、規制の度合いによって条約対象種が分類されています。

 付属書Tには、絶滅に瀕している種で、
商業目的の人工繁殖第3世代(F2)以降など一部の例外を除いて、国際取引が禁止されています。キエリボウシインコ、スミレコンゴウインコ、コンゴウインコ、ヤシオウム、シロビタイムジオウム、コバタン、オオバタン、ニョオウインコ、ヘイワインコ、キボウシインコ、アカボウシインコなど、鳥綱では2目145種13亜種 が付属書Tに掲載されています(ハイブリッド品種の場合、T×Uの掛け合わせではTの扱い)。認められた商業取引の場合は輸出国の輸出許可書と輸入国の輸入許可書、双方が必要になります。

 付属書Uの種は現在必ずしも絶滅に瀕していないが、取引を規制しないと将来、絶滅する可能性のある種です。
野生捕獲鳥でも商業目的の取引が認められていますが、輸出国の輸出許可証(通称サイテス)の発行が条件となっています。付属書Uの代表的な種は、セキセイ・オカメ・コザクラを除いたすべてのオウム目、ブンチョウ、キュウカンチョウなどで1目1,263種32亜種が掲載されています。

付属書Vの種は締約国が自国内の種の保護のため、他の締約国の協力を必要とするものでセネガルホンセイなど149種です。国際取引には
原産国証明書および該当種を附属書Vに掲げた国から行われる場合は輸出許可書が必要となります。

 1996年度の正規国際取引総数(密輸は含まず)は付属書T、U合計320,150羽で、このうち日本は1位
42.5%(136,179羽)、2位スペイン21.2%を大きく上回る世界一の輸入国になっています。

◆解説◆
・日本がワシントン条約に加盟したのは1980年ですから、それ以前に輸入された個体については適用を受けません。今も老齢鳥では足環のない個体も多いですが、これは1980年11月の条約発効前輸入個体であることもあり得ます。
・ワシントン条約は国際商業取引に関する取り決めであって、各国国民が対象種を飼育することを規制するものではありません。国際取引を規制することで結果として絶滅を防ぐことが出来るという考え方によっています。
・附属書Tの種は原則として国際取引禁止です。ただし従来からあるブリーディング産業の既得権益維持もあり、商業目的の人工繁殖個体は第3世代(野生捕獲鳥の孫が第3世代)からは国際商業取引が可能です。ただし認められるのは「ワシントン条約事務当局が認証した特定の商業的ブリーダー」だけです。個人的なブリーダーの人工繁殖個体は第3世代以降でも認められません。現在のところ、オオバタンやニョオウインコなど一部の種を除いて、認証されたブリーダーからの繁殖個体種はありません。
・附属書Uの鳥種は原産国の輸出許可があれば野生捕獲鳥の商業取引が認められるため、「ブリーディング用」などと称して盛んに輸入されています。慣れていない個体で異様に安く販売されていますからすぐにわかります。残念ながら発展途上国の多いオウム・インコの輸出国では、お金次第で簡単に輸出許可証が発行されているようです。野生捕獲鳥は種の保存を脅かすのみならず、さまざまなウイルスを国内に持ち込む可能性があります。あらゆる観点からこうした個体を迎えるのは避けたいものです。
・附属書Vの鳥種はオウム目ではガーナが自国の鳥を守るために設定したセネガルホンセイインコだけです。ガーナから輸入する場合は輸出許可証、それ以外の国から輸入するには原産国証明書が必要になります。
・かつて輸入大国であったアメリカが全面的に野鳥の輸入を禁止したことから、現在では日本がダントツの輸入大国になっています。密輸も後を絶ちません。附属書T種でも、学術目的の輸入は認められるため、私営動物園などと結託して学術目的として輸入し、それを横流しで販売するような例も見られます。当然犯罪です(2001年10月、愛知県大府市の輸入業者がその手口でスミレコンゴウを輸入して逮捕されました)。
・野生捕獲鳥のヒナに足環をはめてブリーディング個体に偽装する例もあります。鳥を迎えるのは「輸出許可証」(通称サイテス)を添付してくれるショップが望ましいでしょう。

輸出許可証
(アメリカ合衆国の例


輸出者、輸入者、標本の学名・英名、標本の状態(生体)、孵化日、リングナンバー、ソース(人工繁殖個体か野生捕獲個体か、など)、標本の出生地などが記載されています。

アメリカの場合は、US.Fish & WildLife Servis が「管理当局」として発行します。

ワシントン条約では、各国に「管理当局」と「科学当局」を定めるように求めています。
日本の場合は管理当局は経済産業省、科学当局は環境省です。

お迎えに際しては、この種類のコピーをもらえるショップなら安心です。
書類と個体のリングナンバーの照合確認をすることをお忘れなく・・・。


「外国為替及び外国貿易法」 (外為法)

 ワシントン条約の目的を実現するために、国内法では外為法第52条の「外国貿易及び国民経済の健全な発展を図るため輸入の承認を受ける義務を課せられることがある」を適用して、不正輸入阻止の水際規制をしています。具体的には輸入貿易管理令でワシントン条約対象種の輸入に制限を設けています。つまり条約では附属書Uの種については輸出国の輸出許可書だけでOKな国際取引ですが、経済産業省の事前確認を輸入の条件として付加しているのです。

◆解説◆
・ワシントン条約は国家間の取り決めですから一般人には直接影響しません。そこでワシントン条約締結国としての責任を果たすために、国内法として外為法に関連項目を規定しました。
・サイテスT種は輸出・輸入双方の許可が必要ですが、U種は輸出許可だけでOKというのがワシントン条約です。しかし発展途上国が多い原産国では、輸出許可が必ずしも公正になされるとは限りません。そこで輸入に際しても規制を設けるべく「承認」を義務付けたのです。
・T種は「輸入割当品目」、U種は「輸入承認品目」として扱われます。「割当品目」として他に指定されているものは、軍艦、戦車、機関銃・・・。サイテスT種の輸入は、戦車を輸入するのと同じくらい大ごとなのです。つまりそれだけ、T種は地球にとって重要な存在なのです。
・この手続きを踏まない輸入をした場合、懲役1年以下、100万円の罰金です。
・個体をカバンに隠して持ち込む純粋な「密輸」は関税法違反で、懲役5年以下、50万円以下の罰金です。


「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」 (種の保存法)

 対象の「希少野生動植物種」は国内外の様々な動植物ですが、「国際希少種」としてはワシントン条約付属書Tの種が対象になっています。種の保存法では、譲渡し・譲受け又は引渡し・引取り、販売又は頒布をする目的で陳列をしてはならないと規定していますが、環境大臣に登録した商業的目的で繁殖させた個体は取引・陳列可能としています。

 陳列をするときは、その個体等に係る
登録票を備え付けておかなければならず、個体を譲り渡すときは登録票も同時に譲り渡すことが原則です。対象個体を譲り受けた者は、30日以内に環境大臣に届け出なければなりません。以上の手続きをしていない譲り渡しまたは譲り受けは、一年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する、とされています。

◆解説◆
・ワシントン条約の目的を達成するためにこの法律が生まれました。
・この大事な法律が案外忘れられています。この法律は国内におけるサイテス附属書T種の取引(有償無償問わず)を原則禁止したものです。
・簡単に言えば、「譲受け」はお金を伴う所有権の移動、「引渡し」はお金を伴わない占有権の移動です。つまりお金は関係ないのです。
・注意すべきは譲受けをした者、つまり買った人も売った人と同罪ということです。オオバタンなどサイテスT種を登録票無しに買うのは犯罪行為なのです。
・この法律は国内取引の規制法ですから、国内で人工繁殖させた個体も同じように対象になります。サイテスT種の繁殖をした場合は、ただちに環境省に届け出て、登録を受けるようにしてください。登録は密輸個体を国内から排除するために必要なことなのです。ただし、ハト科のイエバトや、ダチョウのように明らかに家禽となっている飼育下個体群は規制外扱いになります。
・ワシントン条約発効前に輸入された個体の譲渡しにも適用されます。発効前輸入個体を譲渡す場合は、登録を受けなければなりません。

国際希少野生動植物種登録票
<コピーしてありますので「複写」マークが出ております>

附属書Tの種は必ずこの登録票とともに生体が移動することになります。

この登録票なしの譲り渡し等は違法行為です。

この登録票無しに、販売目的(値札が付いた状態)で陳列した場合も犯罪となります。

法では環境大臣が発行することになっていますが、法に基づき指定登録機関
(財)自然環境研究センター(東京都台東区) が交付しています。


「動物の愛護及び管理に関する法律」 (動物愛護法)

「動物が命あるものであることにかんがみ、何人も、動物をみだりに殺し、傷つけ、又は苦しめることのないようにするのみでなく、人と動物の共生に配慮しつつ、その習性を考慮して適正に取り扱うようにしなければならない。(第2条)」という基本原則のもとに動物の虐待防止や適正な取り扱い方などの動物愛護に関する事項と、動物の管理に関する事項が定められています。

 動物の飼い主等は、動物の
健康と安全を確保するように努め、動物が人の生命等に害を加えたり、迷惑を及ぼすことのないように努めなければなりません。また、動物による感染症について正しい知識を持つとともに、動物が自分の所有であることを明らかにするための措置を講ずるよう努めなければなりません。

 動物の
販売、保管(ペットシッターを含む))、貸出、訓練(出張訓練業者を含む)、展示を業として行う者は、都道府県知事等への登録義務が課せられています。また悪質な業者について登録及び更新の拒否、登録の取消し及び業務停止の命令措置がなされ、無登録の営業は30万円以下の罰金が科せられます。さらに、動物取扱業者には、基準(飼養施設の構造、動物の管理方法等に関する基準)を遵守する義務があります。都道府県知事等は、施設や動物の取り扱いについて問題がある場合、改善するよう勧告・命令をすることができ、必要がある場合には立入検査をすることができます。

 愛護動物(牛、馬、豚、めん羊、やぎ、犬、ねこ、いえうさぎ、鶏、いえばと、あひる、その他人が飼っている哺乳類、鳥類、爬虫類)をみだりに殺し又は傷つけた場合は、1年以下の懲役又は
100万円以下の罰金に処すこととされ、さらに愛護動物に対しみだりに給餌又は給水をやめることにより衰弱させる等の虐待を行った場合、あるいは遺棄した場合は、50万円以下の罰金に処することとされています。  

◆解説◆
2005年6月、従来の「動物の愛護及び管理に関する法律」が改正され、2006年6月から施行されました。
・動物は「モノ」ではなく「命あるもの」として共生していくべきであることを規定しています。動物を愛する心、弱い立場を思いやる心が国民の道義心・博愛精神を高めるという立場での法律です。動物愛護精神は文明国を自負する日本では当然持つべきことではないでしょうか。
・単に可愛がるだけでなく、動物・飼い主・周辺社会すべての健康と幸福のために、飼い主は勉強せねばならない、適正飼養を心がけなければならないのです。
・改正後ショップ等の規制が厳しくなり、従来の「届出制」から「登録制」に転換。悪質なショップの営業登録更新を許可しないような強力な指導ができるようになりました。何か問題が生じたら表示が義務づけられている都道府県知事の登録動物取扱業者標識を確認して、担当窓口に相談してみましょう。無届営業はそれだけでも犯罪なのです。
・遺棄も50万円以下の罰金の犯罪です。いかなる理由があっても、飼い鳥を外に放すような行為をしてはいけません!


「動物取扱業者が遵守すべき動物の管理の方法等の細目」 (環境省告示第20号)

ペットショップなど動物取扱業者の守るべき基準

(飼養施設の構造)
 動物が、自然な姿勢で立ち上がり、横たわり、
羽ばたくなど日常的な動作を容易に行うための十分な広さと空間を有すること。過度なストレスがかからないような温度、通風及び明るさが保たれる構造であり、又はそのような状態に保つための設備を備えていること、など。

(動物の管理の方法等)
 ケージ等に、動物の生態及び
習性並びに飼養期間に応じて、遊具、止まり木、砂場及び水浴び、休息等ができる設備を備えること。異種又は複数の動物を同一飼養施設内で飼養する場合には、飼養する動物の組合せを考慮し、過度な動物間の闘争の発生を避けるようにすること。

 動物の衛生の確保並びに疾病及びけがの予防措置として、
新たな動物を飼養施設内に搬入するに当たっては、当該動物が健康であることを確認するまでの間他の動物と接触させないようにすること(検疫)。動物の疾病及びけがの予防並びに寄生虫の防除等日常的な健康管理に努めるとともに、動物が疾病にかかり又は負傷した場合には速やかに必要な処置を行うこと。 必要に応じて獣医師による診療が行われるようにすること。飼養施設及び設備又は器具の清掃や消毒を定期的に行うとともに、飼養する動物の排せつ物その他の廃棄物を適正に処理すること。 動物の死体は速やかに適正に処理すること、などが定められています。

◆解説◆
・飼養施設や管理について、一応の基準がないと指導もできません。そこで定められたのがこの基準です。
・「虐待ショップ」などという言葉を耳にしますが、飼養管理の科学的研究が進んでいない現状では、なかなか虐待の定義ができないものです。この基準を最低ラインと考えましょう。
・この基準を守らない業者は動物愛護法や条例の改善勧告対象となります。
・地方自治体の愛護窓口は「食品衛生課・乳肉係」などである都道府県が多いようです。これは立ち入り検査員が獣医師の資格を持つものと定められており、行政では乳肉係にしか獣医師がいないという現状によるものでしょう。しかし動物愛護という情操にかかわる部門が果たして乳肉係で十全な機能を発揮できるのか、物理的にも疑問です。ペットショップの監督を乳肉係が積極的にしてくれるのか、私たち納税者は監視すべきでしょう。
・「都道府県には業者に指導する権限がない」とクレームを門前払いした自治体窓口の報告を複数受けています。動物愛護法を私たちはもっと活用したいものです。
地方自治体の動物愛護管理行政担当窓口一覧 (環境省サイト)
http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/local_gov/index.html
・1999年、ペットショップが密輸されたオランウータンを販売するために展示し、起訴され有罪になりました。しかしその後も今日まで堂々と営業しています。またBウイルスに感染したカニクイザルを販売するなど数々の問題を起こし続けています。こうした業者に何の手も打てない現状はぜひとも改善したいものです。

以上、ご理解いただけましたでしょうか。
「法律があるから守らなければ」 「捕まりたくないからしない」
というのではなく、こんな法律がなぜ必要になったのか、という背景を考えていただければ幸いです。

なお、このページは2001年9月30日に開催されたTSUBASAセミナーでの発表を元にしたものです。


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