飼鳥情報センター  

  しつけとトレーニング(1) 「しつけ」

噛み癖の矯正鳴き癖の矯正|>(2)「トレーニング」

アメリカで定評のしつけ本です 『ザ・インコ&オウムのしつけガイド』

2005年、素晴らしい本が出版されました。
アメリカで最も信頼されている "Giide To Companion Parrot Behavior" の翻訳本です。
大型インコと暮らす皆さまは、ぜひご一読下さい。


このページは大型インコの問題行動(噛み癖・鳴き癖)の矯正と、おしゃべりトレーニングの効果的な方法について説明します。こうしたノウハウは欧米では非常に研究が進んでおり、このページでも別記の書籍を参考にしています。本により人により、逆の方法を紹介している例も少なくありませんが、ここでは私の乏しい経験を元にお話ししたいと思います。

ここで3点、気をつけていただきたいことがあります。

  1. しつけもトレーニングも愛情が背景にあること。一方的な要求では双方ともにストレスがたまるだけである。お互いに楽しみながらのものであることが大切。ヒトと鳥との信頼関係が構築されていることが前提となる。
  2. 個体差は非常に大きい。同じ方法をとったからといって、すべての個体に常に同じ反応があるとは限らない。犬のしつけでは犬の性格の「剛性」「柔性」ということが言われるが、同じように大型インコでも個体差に応じた方法を、ヒトの側が見つけてやらなければならない。ここで紹介する例は一例として参考に留める必要がある。
  3. しつけやトレーニングはできるだけ若い時期(6カ月〜1歳)ぐらいから始める必要がある。それ以後でも絶対に不可能と言うことはないし、成功している例もあるが、かなりの忍耐と時間をかけることを覚悟しなければならない。

以上のことを考慮しつつ読んでください。

1.しつけ

1−1 噛み癖の矯正

噛む理由と状況

 鳥がヒトを噛むことは、何らかの意味があります。単なる遊び、拒否、怒り、嫉妬・・・さまざまです。拒否や怒りの場合には、その原因がヒトの側にあるならば、その行為をやめる必要があります。嫌なことをされて拒否すら禁じられるのでは鳥としてもたまりません。ただし、その拒否や怒りの表現としての「噛み行動」も、甘噛み程度にさせることは可能です。甘噛みで指をどっこいしょと「やめてよね」という具合の意志表示に緩和させられるのです。一方、遊びで噛んだ場合は厳しく叱る必要があります。絶対に「噛んだら○○してくれた」と関連づけさせないようにしなければなりません。その意味でしつけは、まず「噛ませない」ことが先決です。噛みそうになったら歌を歌ったり、オモチャを与えたりして気をそらします。大型インコの遊びの中心には「噛む」行為がありますが、それ以外の楽しさを教えるわけです。

 噛まれる場合はたいがい手に乗せている状況でしょう。別の所にいて、いきなり飛んできて噛むような場合は、明らかな「攻撃」ですから、ここで触れるしつけの範囲を超えます(白色オウムの剛性の鳥ではあり得ます)。手に乗せるときの注意は「ヒトの肩より上の位置には置かない」ことです。鳥は習性から高いところを好みますが、物理的な高低をステータスの高低と解釈する傾向があると言われています。欧米では「ヒトの腰の高さに留めるべきである」とされます。ですから手に乗せて遊ぶときも、あまり高い位置(肩の上を含む)に鳥を置かない方が無難なようです。

 また、噛まれるヒトに多いのは、「こいつ噛むんじゃないかな?こわいな」と恐る恐る接近するような行動をすることです。鳥は敏感にヒトの心を読みますから、恐れながら近づくヒトに噛み付く傾向が多いようです。「細心の注意をしながら恐れずに」、当然のように振る舞うことで鳥に「噛もうかな?」と考える隙を与えず、その間に手に乗せてしまうということも大切です。手に乗せようとしててを差し出したとき、噛もうとしても無視して乗せてしまいます。噛まれても途中で中止してはイケマセン。噛むことで何か目的を達することができる、噛めば何か満足できる、利益が得られると思わせないことが大切です。

噛まれた場合の対処法と叱り方

   「叱る」のはしつけとしては下策です。「叱らなくてもすむ状況」を作る、「ほめて長所を伸ばす」ことが先決です。おしゃべりや芸が得意な子は、あまり問題行動に走りません。しかしここでは、現実に噛むようになってしまっている子への現実的な対応を考えてみましょう。

 噛まれた場合は、ヒトに非があった場合も「いけない!」と強く言葉で叱り、手をグラグラ揺らして不快な状態を作り出します。噛むのをやめたなら「えらいえらい」と誉めてあげましょう。またヒトが行っていた嫌がる行為も、その時点でやめてあげます。噛み続ける場合はさらに鋭く「いけない!」と叱り、揺らしを続けます。それでも噛み続けるときは無理にクチバシをこじ開けたりしないで(クチバシを痛める可能性があります)、「フッ!」と強く鋭く短く、鳥の顔の斜め上から息を吹きかけると、ほとんどの場合噛むのをやめるでしょう。よくオカメインコなどが怒ったときにこの「フッ!」をしますが、インコ共通の怒りの表現なのかもしれません。ともかくまず叱り、それからこちらも反省すべきは反省するという順番は崩さないようにします。叱る時の言葉は「いけない!」が良いでしょう。「だめ」とか「こら!」は日常生活で使う言葉なので、特別な響きがなく効果が薄いのみならず、日常いつもビクビクするコになってしまうことがあります。

 信頼関係が出来上がっている場合、「いけない!」と声で鋭く叱り、黙ってじっと目を見詰める(にらむ)ことを10秒ぐらい続けることも効果があります。目をそらしても手を動かしてにらみ続けます。十分反省するものです。そして10秒後(もう噛んでいない状態です)に、急ににっこり笑って「ほ〜ら、噛まないと楽しいね」と遊んであげます。この態度の急変はフォローとしてもメリハリを付ける意味からも非常に効果的なものです。

 なお「叱る」のに体罰は厳禁です。クチバシを指で弾く程度の体罰ならば構わないという人もいますが、あまりお勧めできません。1回の体罰で長年の信頼関係が崩れさった例を耳にするからです。
 さらに厳しい罰則は「退場宣告」です。第1回目の噛み行動の場合は数分間、再犯(?)の場合は10分程度、隔離してしまい、その間相手にしないのです。隔離する場所はケージやスタンドなどの「定位置」や「テリトリー」では逆効果で、いつもはいない場所(物置など)に入れてしまうのです(もちろん事前の安全確認が必要ですし、なんらかの止まり木は用意します)。これは非常に効果的なようです。よく馴れているコの場合、家族とのコミュニケーションを絶たれることは、かなりのショックであるようです。

1−2 鳴き癖の矯正

鳴き癖とは

 ここでいう「鳴き癖」とは、人語のおしゃべりではなく、「キャーキャー」というような不快な地鳴き癖です。人語のおしゃべりは多少目をつぶって(耳をふさいで)あげてください。返事をしてあげることで会話能力が向上することにも繋がりますので、むしろ歓迎すべきことでしょう。また白色オウムやコンゴウインコが主に朝夕に猛烈な叫び声を上げる「オタケビ」は矯正不可能です。これは雄鶏のコケコッコーのようなもので、習性ですので矯正はできません。無理な矯正はストレスを招き、より深刻な問題行動につながるおそれがあります。 地鳴きでうるさい場合、ほとんどのケースは寂しくてヒトを呼んでいるのです。完全にヒトがいない場合は案外鳴かないもので(無人カメラ設置で実験)、家にいるのに姿が見えない時などによく鳴きます。

鳴き声の分類
 大型インコの朝夕のオタケビ、鳥としての自然なサエズリ、ものまね、思い通りにならない事が主原因の呼び鳴き(だだっこ鳴き)などです。このうち問題になるのは最後の呼び鳴きでしょう。大型インコのオタケビは矯正が非常に難しく、また下手な矯正はストレスの原因となって毛引きその他の重大な問題行動を惹起する可能性があるので、オススメできません。

対処法

 人の姿が見えないときの呼び鳴きを矯正するには「呼ばれても行かない」ことが一番です。かわいそうに思いますが、「鳴けば来てくれる」と思わせてしまったら、あとが大変です。人語で呼んだときだけ行ってあげるようにすると、積極的におしゃべりし、地鳴きが相対的に減ってくるようです。

 そとに出しているとき、身近にヒトがいるにもかかわらず鳴き叫ぶときは、前記の「退場宣告」が効果的です。地鳴きしたら即座に「鳴いたら退場」と宣告し、隔離してしまいます。しばらくは鳴き続けることでしょうが、静かになるまで迎えに行ってはいけません。静かになったら「えらいえらい」と誉めてあげて、また遊んであげましょう。これを繰り返しを続けることで、かなり鳴き癖は矯正できるでしょう。また人語のおしゃべり能力が高いコほど地鳴きが少なくなる傾向がありますので、おしゃべり上手に育てることも地鳴き防止の理想的な方法と言うことができます。ですから、人語での多少の騒がしさには人語で返事してあげて、おしゃべりの楽しさを覚えさせることが大切です。
なお、噛み癖同様に体罰は厳禁ですし、大声で叱ることはかえって興奮させて叫ばせる原因になってしまいます。

具体的な矯正の方法:
 そもそも鳥は大好きなヒトと一緒が大好きなので鳴くのです。行かなくても安心できると自覚させること鳴いても楽しいことがおこらないことヒトのおしゃべりなどを真似した方がウケること、を覚えてもらえるのが大切です。現実的な問題としては、個体差にもよりますが矯正は可能です。そのポイントは3点あると思います。

@いくら鳴いても行かない、相手にしない
 これが最高の方法です。大声を出しても絶対にそばに行ったり、遊んであげたりしないことです。最初のうちはうるさくて仕方がないでしょう。また精神的にも辛いでしょうが、長く楽しく暮らすために最初のしつけは大切です。だだっこが「騒げばオモチャを買ってくれる」と思ってしまうとなかなか言う事を聞かなくなります。鳥の場合はヒトの子以上にその傾向があります。「相手にされない=群れから離れる=生存の危機」と本能的に感じるからです。その不安感を解消してあげながら、ともかく「鳴いても行かない」「遊んでいても大声を出したら相手にするのをやめる」ことが、何よりも大切です。
Aおしゃべり、物まねを教える
 うちの大型たちはこの方法でヒト語オンリーの鳥になってくれました。鳥は家族に「ウケる」「相手にしてもらえる」ことを何よりの喜びと感じるようですから、叫ぶのではなく、おしゃべりをしたり物まねをしたときには、オーバーなくらいに喜んで見せてあげると、「鳴くよりしゃべるほうがウケるらしい」と考えてくれます。このあたりは大型と小中型とでは知能差がありますので一般的には語れないのですが、インコ達にかなり共通して言える事です。「鳴いたら無視、物まねで大喜び」を試してみてください。
Bひとり遊びに慣れさせる
 鳥を出しっぱなしで飼っておられる方の場合、24時間フルに相手をしなくてはいけなくなる可能性があります。鳥には鳥の時間を作ってあげなくてはいけません。安心できるテリトリー(ケージ)内でゆっくりくつろぐ時間。これは健康維持のためにも必要な事です。またオモチャも大切なアイテムです。ボウシインコは、かなり激しく遊ぶようですが、これはボウシ一族の流儀で、決して異常行動ではなく、むしろ望ましい反応です。ストレス解消だけでなく知能も向上すると言われています。オカメにも何か喜ぶおもちゃを与えて、ひとり遊びができる子に育てましょう。

 具体的に言えば、まず窓を閉め切って比較的近所に迷惑のかからない環境を用意して、家族全員がひとりずつ別室に消えます。当然オカメちゃんは鳴き叫ぶでしょう。ここでぐっと我慢します。根競べです。10〜15分鳴き叫ぶと、さすがに疲れて鳴きやむでしょう。鳴きやんで5分ほどしたら、家族全員が出て来てヒト語で話し掛けてあげます。しばらくは、これの繰り返しです。「鳴いても無駄」「鳴かなくても家族は来てくれる=安心」「姿は見えなくても家族はいる=見捨てられているのではない=生存の危機はない」と思ってくれるのを期待します。決してあきらめないで頑張ってください。

 なお防音ボードで囲うようなことはストレスの原因になりかねません。ピアノ用防音室にケージを置けるのならば最高のバードルームですが、これには数百万円の費用がかかるので一般的ではありませんね。
日本でもこの分野の研究が進んでいます。このページは今後も加筆していく予定です。