トイレトレーニング|手乗りトレーニング|おしゃべりトレーニング|<(1)しつけ|>(3)「鳥とのおつきあい」
「鳥にトイレのしつけなんか出来るわけがない」と言われることが多いのですが、大型インコについて言えば、ある程度は可能です。もちろん犬猫のように自分からトイレに行って用を足してくるようなことは難しいですが(現実にはそういうコもいます!)、鳥はいつも飛び立てるように常に排泄する体質なので、「出物・腫れ物、ところ嫌わず」とばかり、あっちこっちで用を足すのはやむを得ないことです。これを無理に矯正しては健康を害してしまいます。ですから「しつけ」と言っても自ずから限界があることは当然です。また個体差がありますので絶対できるわけではありません。決して無理なことを強制してはいけません。なお、知能の高い大型インコの中には、放鳥タイムには(緊張するのか)排泄をじっと我慢しているコもいますが、これは体のためによくないので、適切に排泄できるようにしてあげたいものです。
基本的には「言葉と行為を関連づける」ことを応用します。鳥が排泄するとき、ちょっと膨らんで力んでポトリと落とします。この力んでいるときに「トイレー」とか「ふんし!」とか、適切な言葉を掛けます。ケージにいるときも、外に出ているときも、力む様子が見られたら、必ずそのフレーズで声をかけます。排泄直後に言葉を掛けてもかなりの効果はありますが、できれば直前の方が望ましいでしょう。それは「ほめる」ことができるからです。「トイレー」と言ったらポトリ。すかさず駆け寄って「エライねー、すごいねー」とほめてあげたり撫でてあげることができ、これが鳥にとって楽しく、大きな励みになるのです。「しつけ=楽しみ」の公式をはずさないためにも、できればこうした方法が望ましいでしょう。このベーストレーニングを最低1ヶ月は続けます。ちなみに「ふんし!」は「フンしなさい」を大阪弁で言っているのではなく「糞屎=うんち」の動物関係用語で、「ふんしのしつけ」などという言い方で用います。できるだけ日常会話で使わない言葉でしつけた方が、後々楽です。「こんにちは」で排泄されては困りますので・・・。
トイレのしつけには2種類あります。場合場合によって使い分けすることが必要です。
(1)トイレタイムを見計らって、合図すると用を足すようにさせる
(2)用を足すとき、鳥の方から合図を送るようにさせる
どちらかと言えば(2)のほうが鳥の体のためには良いと思いますが、しつけるのが容易なのは(1)の方法です。鳥が排泄するのは、自然の欲求のとき以外に、着地したとき、安堵したとき、極度に緊張したときなどがあります。この習性を利用するのが(1)の方法です。外でひとしきり遊んで10分ほど経過し、「そろそろだな」と思ったら、スタンド(止まり木)にポトリと着地するような感じで止まらせて、同時に「トイレー」と声を掛け、こちらも力むポーズをします。すると着地したショックと安堵感も相まって、ポトリと排泄します。そのときに再び「トイレー」と言って大喜びしてあげます。ほめてあげます。
これを繰り返すことにより、スタンドに止まらせて「トイレー」と声を掛けると自分で力んで用を足してくれるようになります。我が家のオオハナインコは、元々から止まり木に止まったときしか用を足さないコでしたので、非常にスムーズにいきました。そうでなくてもベーストレーニングがうまくいっていれば、上手にできるようになることでしょう。あせる必要はないのです。
ベーストレーニングに半年以上かかる例もあります。言葉→行為→ほめてもらえる→楽しいという図式を無理なく形成することが重要なのです。これはすべてのしつけ・トレーニングに共通のことです。
(1)が可能になれば(2)へも無理なく移行できると思います。「言葉→行為」を「行為直前(力む)→言葉→行為」に置き換えることになります。これは言葉と行為が結びついていれば比較的容易です。コツはやはり「ほめる」ことです。上手にできたときに、大喜び、満面笑みではしゃいでみせれば、その感情はストレートに鳥に伝わります。鳥も楽しくって仕方がないといった様子ではしゃぎます。そうした積み重ねで(2)もマスターします。鳥が「トイレー」と言ったとき、すかさず下に敷き紙を置けば、爆撃の被害を被らなくて済むようになります。
一つの注意点は、「『トイレー!』と言えば遊んでくれる」と思わせてはいけないことです。言葉だけでこちらが反応すれば、当然ながら、ウケようとして年がら年中「トイレー!」と叫ぶコになってしまいます。言葉と行為が一致したときにはじめてほめるようにしてください。ここは重要なポイントです。これら一連のしつけを急がず楽しく無理なく行なってください。部屋中に爆撃されることはなくなり、お客様の服に粗相することも少なくなるでしょう。ただし完璧を要求してはいけません。犬の場合はトイレ以外の場所で用足しをしたときに叱ってしつけることがありますが、鳥にそこまで要求するのは酷です。自然な習性をある程度矯正してしまったわけですから、時々失敗しても責めないようにしてください。失敗してもあわてず騒がず、しかも怒らず、淡々と処理しましょう。騒いだりすると、「楽しい遊び」と勘違いして、あちこちに爆撃を開始してしまうこともあります。大型インコは自分の行為が「ウケた」「ウケない」をはっきりと察知します。困った行為で「ウケた」と思われるようなことのないように注意してください。これも、すべてのしつけ・トレーニングの基 本項目です。
大型インコの場合、非常に知能が高いコ(白色オウム類に多い)では自ら定めたトイレに行って排泄するコまでいます。主としてケージに戻ってするのですが、敷紙(新聞紙など)の上に歩いて行ってするのです。まったく驚くばかりですが、つまりは条件反射が学習にまで昇華したものです。それこそ犬のように、トイレの気配がしたら新聞紙の上に連れていって促す(言葉がけ、手を揺らす、指で指示するなどさまざま)ことによって排泄しますので、ここまでくればとても助かります。
結論としては、日頃から行動を観察して、排泄行為を何か別の行為、言葉と関連付けるようにすれば、かなりの率でトイレのしつけが可能となるのです。しそうになったら下に紙を敷き促す、ケージに戻す、スタンドに止まらせる、いろいろチャレンジしてみてください。ただしくれぐれも強制はいけません。「あそこの家のコができたのだから、ウチのコもできるだろう」などと変な対抗意識を燃やして、鳥に辛い思いをさせることだけは絶対にして欲しくないと思います個体差は大きいのです。
簡易式スタンドを作ります。これは樹脂の植木鉢受け皿を土台に、ヤザキのイレクターパイプで簡単に作ることができます。 ケージから出すと同時にこのスタンドに乗せます。すると大抵の場合、条件反射的にフンをします。もしすぐにしない場合はするまでじっと待ちます。 フンをしたら、直ちに「トイレー!」と叫んで手の上に乗せ、「良くできたねー、イイコだね〜」と誉めてあげます。撫でられるのが好きなコならば、せいぜい撫でてあげましょう。 これを繰り返すことで「ケージでトイレするとウケる!」と学習してくれるでしょう。「誉める」こと。これがしつけの基本です。 | ||
簡易式スタンド | 乗るとフンばる! |
大型インコとコンパニオンバードとして暮らすには「手乗り」にさせることが基本になります。大型インコ(人工繁殖個体)の場合はヒナから差し餌で育てなくとも、成鳥になってからでも手乗りにすることが可能です。もちろん愛情でヒトと鳥が深く結ばれていることが前提になるのは言うまでもありません。またあせってはいけません。おいしい食べ物を手から与え、ケージ越しになでてあげ、手に対する恐怖心をまず取り去る努力をしなければなりません。また常に声をかけ、仲良くなることも不可欠です。
ヒトと鳥の関係が良好であることを前提に話を進めます。
手乗りのトレーニングにはいくつかの方法が言われています。どのような方法を取るにせよ、手に乗ること=楽しい、と認識させねばなりません。急いだり叱ったりすることは決して良い結果を生みません。ゆっくり優しくが基本です。
インコは目の前にある棒状のものに乗ってしまう習性があります。テントウムシが上へ上へ登っていくようなものです。これを利用して、胸の前に手をゆっくり差し出し。おずおずと片足をかけたら、その足方向に鳥の重心がかかるように手を加減して動かし、体重がかかったと思われた瞬間にスッと持ち上げます。持ち上げた後は大騒ぎせず、静かにほめてあげます。もう一方の手で大好きなおやつをあげても良いでしょう。あまり高い位置で扱ってはイケマセン。羽切りしてある個体は落下事故が危険です。
何度か慣れたら、左右の手を行き来させて、手に乗ることが危険でない、むしろ楽しいことを教えてあげます。言葉で誉めることを忘れずに。急いではイケマセン。
いつも止まる止まり木やスタンドを次第に短くしていき、仕方なく手に乗るようになる方法です。やりかたはさまざまで、可動の止まり木を手前にジワジワと引っ張り、鳥が少しずつ端っこに寄っていきます。その端に手をそれとなく添えておきます。じわじわ止まり木が短くなって、鳥はやむを得ず手の上に乗るという寸法です。
もちろんスッと止まり木を引っ張るような早急な事はいけません。じわじわ1週間かけて短くしていきます。
着脱可能な止まり木に鳥を止まらせ、次第に傾けていきます。45度程度の傾きを付けると鳥は上へ上へ移動しますので、最高部で
棒を持っている手を用心深く静かに鳥の下に移動させて足をかけさせて、ゆっくりとすくいあげます。もう一方の手は噛まれないように気を引くおとりの役を果たします。
おしゃべりが得意な鳥種は、まずヨウム。次にボウシインコ(キエリボウシ、キビタイボウシ、アオボウシ、オオキボウシ、パナマボウシなど)が続き、ワカケホンセイ、ダルマインコ、またオトメズグロなどのヒインコ科の鳥も案外におしゃべり上手です。
意外なのは「オウム」の代表である白色オウム類(バタン)がおしゃべり下手であることです。例外はあるものの、単語数においても会話(TPOを踏まえた受け答え)の能力においても、あまり上手ではありません。こうしたおしゃべりが苦手な鳥種に対して、あまりしつこくおしゃべりを強要することは、ストレスの原因になってしまいます。
そもそも鳥がヒト語をしゃべる必要はありません。それがなぜしゃべるのか?それは飼い主、ヒトとコミュニケーションをとりたいと考えているからに他なりません。ですから「トレーニング」などと銘打ちましたが、実際はそのような苦痛を連想させるものであってはいけません。スポ根ではなく、楽しい「遊び」の一環であるべきなのです。欧米ではバードショーに出演させるような目的でのトレーニングもなされています。非常に効果的なノウハウもあるのですが、私たちのように単に家族としてコミュニケーションを楽しみたいと考えている場合は、あまり無理な方法をとるべきではないと思います。あくまでも「楽しく遊びながら」をモットーに、長い目で考えるべきでしょう。過度の期待と一方的な要求は、大きなストレスを与えてしまうことを常に考えておいてください。苦労して教えた言葉をしゃべってくれたときの感激もひとしおです。
トレーニングにしてもしつけにしても、開始する時期は早いに越したことはありません。かつては大型インコは成鳥で入手することが多かったのですが、最近では人工繁殖のヒナがたくさん輸入されてきています。そうしたヒナを迎えた場合は、差し餌が無事終了して一人餌になり、健康面での危険がひとやま越えた段階、生後3〜4ヶ月ぐらいから開始するのが望ましいと思います。成鳥で入手した場合は、環境にも家族にも慣れて落ち着いた段階から開始すると良いでしょう。年齢的には3歳になっても一言も発していないコの場合は、かなり難しいと覚悟しなければなりません。1〜2歳ならば急にしゃべり出す可能性もまだ十分あります。
しつけもトレーニングも一種のストレスですから、健康面や体調面、そして精神面で安定した状況になったことを確認してから始めます。大型インコとは長い付き合いになります。最初の段階であわてる必要はありません。
よく言われることですが、トレーニングは「静かで落ち着いた場所」で「若い女性」が良いとされます。確かにその傾向はあります。ただし多少うるさくても、ケージのそばを通るたびに「○○ちゃん、おはよう!」などと愛情を込めて言って聞かせたりしていると、案外に早い段階で覚えるものです。ケージの前で正座して「おはよう」を5分間繰り返すよりも、かえってそのような教え方が効果的な場合もあります。つまりは愛情がこもっているか、が問題なのです。先述したように、好きな相手とコミュニケーションをとりたいためにしゃべるのです。表面的なトレーニングよりも愛情の込め具合が効果に表れるように思います。
トレーニング担当者に若い女性が推薦されるのは「声の音質が高く澄んでいる」からです。男性でもアナウンサーのような人は向いていますし、女性でもハスキーボイスの人は不向きかもしれませんので、これはケースバイケースです。ハスキーボイスが好きな大型インコもいるかもしれません。
まず「楽しく」教えることです。「オウムなんだからもっと覚えろよ!」などという考えで接していると、絶対と言っていいほど覚えません。ヒトとのコミュニケーションの手段として「しゃべる=楽しい」という図式を頭に入れてもらうようにします。ごほうびにオヤツをあげることも効果的ではありますが、上手におしゃべりできたら目の前でこちらもはしゃいで「よくできたね!○○ちゃん!」と誉めてあげることのほうが、ずっと喜びますし、効果的です。触られるのが好きなコならば大いになでてあげましょう。
最初に覚えさせる言葉は「おはよう」が良いとか「ニャオーン」などの擬音語が良いとか言われます。しかし、私が効果的だと思うのは、なんのことはなく「そのコの名前」です。考えてみてください。うちに来て落ち着いて、顔を突き合わせるにしても、通りがかりにしても、まず「○○ちゃん!」と呼ぶのが一番自然です。自然であり、もっとも愛情を持って発音できる言葉、それが名前です。まず静かな環境でゆっくりと、「○○ちゃん!」と言って聞かせます。3分もすれば十分です。これを毎日繰り返します。時期や年齢、馴れ具合、個体差で違いますが、1〜2週間もすれば「○○ちゃん!」と自分で言い出すでしょう。
よく「ひとつの単語を完全にマスターするまでは次の言葉を教えてはいけない」と言われますが、言葉の最後に「・・・・・・。○○ちゃん!」と付ければ、特に他の言葉を聞かせない工夫は必要ないと思います。無理なくそうすることができるのも、名前ならではです。
トレーニングは上記の方法でたいてい大丈夫だと思いますが、特に注意すべきポイントは「スキンシップしすぎない」ことです。密接なスキンシップ(撫でたり手に乗せたりなど)をしていると、鳥はその状態に満足してしまって、言葉によるコミュニケーションの必要性を感じない、ということがあるようです。スタンドなどに放置しておくとヒトとコミュニケーションしたいのに手が届かない、いるはずなのに見えない、見えても来てくれない・・・そのもどかしさから「しゃべる」というコミュニケーション手段に訴えてくることが実例として多いようです。年がら年中ナデナデするのではなく、ちょっと距離を置いておく。すると気を引こうとしゃべり始めます。人間の言葉をしゃべったらすぐに行って「よくできたねー○○ちゃん」とほめてナデナデ。「ピーッ」などの叫び声には反応しない。人間の言葉だけで、ほめ、反応します。これによってまず「しゃべる」というコミュニケーション手段をマスターします。次に言葉のキャッチボール(会話)の段階に入っても、基本的には同様の方法をとります。つまり適 切な受け答えができた場合のみ反応するのです。こうしたことを繰り返すうちに、会話の楽しさも覚えてくれます。その後はTPOの把握へ進みますが、その段階でのトレーニングについては後日補筆します。
おしゃべりが上手な鳥種で、まず最初の1語を覚えれば、あとは特別な工夫をしなくても、どんどん覚えていくことでしょう。常に話し掛けてあげ、また聞いてあげる。上手に言えたら一緒に喜びを体で表現する。これで覚える意欲は増し、次々と、それこそ教えなくても覚えていきますから、ヘタなことは言えません。悪口のような語尾が強い単語は覚え易いので要注意です。
個体差にもよりますが、覚える能力は一度開発されると長期間維持されるとされます。ギネスブックには1000単語以上覚えているヨウムが載っています。2〜30歳になっても、まだまだ覚えるコもいます。一番覚えるのはやはり「若鳥」の時期ですが、その時期を逸しても、あきらめずに話しかけてあげましょう。ある日突然、意外な言葉をしゃべり出すことは、よくあることです。
何度も申し上げてあるように、基本は「愛情」です。しゃべらなくても愛情を持って話し掛け続けることが成功の秘訣です。
日本でもこの分野の研究が進んでいます。このページは今後も加筆していく予定です。