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  しつけとトレーニング(3) 「鳥とのおつきあい」

人鳥関係の改善自己中心鳥の矯正実例しつけとトレーニングの洋書|<(2)「トレーニング」

アメリカで定評のしつけ本です 『ザ・インコ&オウムのしつけガイド』

2005年、素晴らしい本が出版されました。
アメリカで最も信頼されている "Giide To Companion Parrot Behavior" の翻訳本です。
大型インコと暮らす皆さまは、ぜひご一読下さい。


4.人鳥関係の改善

4−1 関係悪化の類型

ヒトと鳥との関係が悪化するケースはよくあります。この場合、3つのケースに大別できるでしょう。

  1. 一人のヒトにしか馴れず、他の家族に攻撃的なケース
  2. 体罰・ルール違反などで信頼関係が崩壊したケース
  3. 発情その他の要因でヒト全般に攻撃的になるケース

 大型インコは繊細な神経と細やかな愛情の持ち主ですから、こうした精神的な問題行動が他の鳥種よりも顕著に見られます。いずれにしても基本的には「愛情で対処する」ことに尽きるのですが、それを前提に具体的なテクニックの一例を紹介したいと思います。
 なお、大型インコは羽をクリップすることで攻撃性を低下させることが可能であるというのが定説です。劇的な関係改善につながった例も多く耳にします。「羽切り」には賛否両論あるのは当然ですが、大型インコに限って言えば、事故防止の観点からも攻撃性の低下の観点からも、クリップはやむを得ない選択であるように思います。
 ただし鳥本来の行動力を奪った責任としてヒトは精一杯の愛情を終生注ぎ続ける義務が生じることは肝に銘じてください。また「自分が飛べなくなった」ことを理解させる(だいたい2週間程度)までは、高い位置に置かない、下にクッション素材を置いておく、等の配慮が事故防止のために必要です。

 また、鳥は物理的な高さをステータスとして認識します。鳥を目の高さ以上の位置に常置してはいけません。またすべての関係改善プログラムに共通して言えることは、鳥のテリトリーで実施しない、ということです。ケージの見えないいつもと違う場所でプログラムを実施すると、鳥は弱気になって非常に素直になるのです。

4−2 「オンリーワン」の改善

 大型インコは家族の中で自分のステータスの序列化を行います。そして誰を信頼すれば一番快適かを判断し、そのヒト一人にベタ馴れして、他のメンバーに攻撃的な行動をとることも珍しくありません。ベタ馴れ対象は給餌・掃除などの毎日の世話をするヒトではなく、遊んでくれるヒトに限るということでもなく、インコが自分で「このヒト」と決めたヒトになります。どちらかと言えば「遊んでくれるヒト」が「世話をしてくれるヒト」に優るようです。

 単に一人にベタ馴れというだけならばまだしも、他の家族に積極的な攻撃を仕掛けてくるようでは困ります。これはできるだけ若いうちに矯正しなければなりません。ベタ馴れ対象が旅行などで長期不在になった場合に収拾がつかなくなるおそれがあります。

(1)信頼するヒトの手から手へ
 私が最も好み、実践している方法がこの「手から手へ」です。自分のテリトリーである場所(たとえばスタンド)から「さぁおいで」と手に乗るのは、馴れたヒト相手でないと難しいことが多いものです。安心できる場所から未知の危険な場所へは誰しも行きたくないでしょう。無理に連れ出そうとすれば「噛む」という形で抵抗することも、自分に置き換えれば理解できることだと思います。

 しかし、安心できる場所から安心できる場所へ、でしたら比較的抵抗なく移動するものです。具体的に言えば馴れたヒトがスタンドから降ろしてしばらく遊んだ後、別の家族の手に乗り移らせます。鳥は上に行く本能がありますから、受け手が送り手よりも高い位置(鳥の腹部)に手をかざしますと、思わず乗ってきます。片脚をかけて重心が移ったら、さっと持ち上げると鳥はバランスを取ろうとして両脚で手に乗ってしまうのです。

 こうして信頼できるヒトから渡されると、「信頼できるヒトが渡すのだからこの先も安全なのだろう」と思うのかどうなのか、案外スムーズに別の家族の手に乗るものです。もちろん手に乗ったからと言って、すぐに別の家族にベタ馴れになるわけではありません。ただじっと我慢しているだけです。信頼するヒトが手を出せば、そそくさと戻ってしまいます。ですから、ここは無理をしないで最初は手に乗せるだけにしましょう。言葉だけは積極的に掛けてください。「○○ちゃん、かわいいね。仲良しになろうね」などなど。で、最初は3分ほどで「さぁ帰ろうね」と言いながら信頼するヒトの手に戻します。

 これを毎日繰り返します。少しずつ滞留時間を長くしていき、言葉も積極的にかけるようにしてください。背中を撫でるなどは禁物です。大型インコは白色系オウムを除いて、概して物理的接触を好みません。よほど馴れたと確信するまではむやみに体に触らないようにしましょう。これを繰り返すことで他の家族の手にも確実に馴れてきます。「安心できる場所」と認識してもらえたわけです。信頼できるヒトが外出中にスタンドから乗り移らせるようにまでできれば、もう安心です。
 このトレーニングは家族全員で必ず行ってください。

(2)「呑んでかかる」
 常に申し上げている「細心の注意をしながら恐れない」接し方の「恐れない」を強調したものです。手を出した場合、「アグルルル」などと言いながら噛んできても、「これは出血するほどでないな」と判断できたならば、優しく明るい大きな声で「いいの、いいの。噛まなくてもいいの!」と、有無を言わせず手に乗せてしまう方法です。乗ってくれれば「良い子だね〜」と言葉で大いに誉めてあげてください。これが案外効果的で、頭の良い子ならばスンナリと受け入れてくれるものです。あまりのあっけなさに拍子抜けしてしまうかも知れません。
 この簡単な方法があまり利用されないのは、やはり「恐い」からだと思いますし、それもまた当然のことです。ショップなどで気心の知れない鳥に対して実行すべきではありません。きちんと制止できる信頼するヒトがそばに控えた家庭内でこそ試行するものです。ただし「恐い」という気持ちを持って接しているうちは決して馴れてくれないという現実を頭に入れ、多少のことは許容して「呑んでかかる」ことは大切だと思います。馴れるまでに最低でも10回は出血サービスをすることになることは覚悟しておいてください(消毒を忘れずに)。
 なお、この方法はボウシインコクラスまでです。コンゴウインコになると身体的危険のリスクがあまりにも大きいと思います。

4−3 崩壊した信頼関係の修復

 世間では「トリアタマ」などと称して記憶がすぐに消えてしまう形容詞に使われていますが、これは鶏のことです(ちなみに「鳥目」も鶏に限ります)。大型インコの記憶力は「トリアタマ」どころか犬猫も顔負けです。そんなこともあって、犬では多用される体罰は鳥には絶対禁物とされます。体罰をしたヒトを10年でも覚えているのです。体罰はそれまでのすべての友好関係を一瞬に崩壊させる結果になってしまいます。それは単に「痛いことをされた」という肉体的苦痛よりも「信じていたヒトに裏切られた」という精神的苦痛に起因するように思われます。
 また鳥は飼養下であっても自然界と同じように一定の生活リズムを大切にします。食事や睡眠時間もほぼ一定しています。ですから朝の餌換えを寝坊して2時間も遅らせたり、日によって夜更かしさせたりしていると生活のリズムが乱れ、精神的に混乱します。そしてやはり「このヒトは信頼できないヒトだったんだ」という精神的葛藤が生じて問題行動に走るのです。
 こうして人鳥関係が崩壊すると、これを修復するのは非常に困難です。結局完全には修復できなかったという結果になるケースも残念ながら多いようです。
 これを防止するには、そうした精神的苦痛や葛藤を生じさせないようにすることが先決です。いじめないこと、体罰しないこと、リズムを守ることです。一度崩壊した信頼関係を再構築するのは、まったくゼロから始めるのよりも格段に困難です。ゼロではなくマイナスからのスタートになってしまいます。ですから、対症療法的なものよりも、予防が何より大切なのです。  それでも万が一、信頼関係が崩壊してしまった場合は、次のような具体的な方法をいろいろと試してみてください。上記の「オンリーワン」対策と併せて行ってください。

(1)餌で釣る
 あまりにも原始的な方法ですが、やはり本能に由来するものは強みを持ちます。単に給餌係になるということではありません。「良い役」ばかり担当させてもらうのです。たとえばまずい主食のペレットは別の(比較的信頼されている)ヒトが与え、嫌われたヒトが美味しいオヤツ(ヒマワリなどのシード、バナナなどのフルーツ等)をあげる。いかにも露骨な作戦ですが、これを嫌われながらもあきらめずに続ければ最も効果が高い方法であると言えるでしょう。すべてにおいて言えることですが、言葉掛けは忘れずに。大型インコとの付き合いには常時言葉掛けが必要です。またあきらめないことも大切です。

(2) 一人きりでそばにいる
 家族全員に外出してもらい、一人で家に残ります。そしてケージのそばで本を読むなどして、常に鳥の視界にいるようにします。とりたててケージをいじったり、ご挨拶に出向く必要はありません。ギャーギャー叫んでも無視します。しばらくその状態が続くと、鳥も退屈してくるのか、言葉なり動作なりで「遊ぼう」という意志表示をしてくるものです。その気配を感じたらおもむろにケージに近づき、指でかるく撫でながら(指をすぐに引っ込められるように注意しながら)、「どうしたの○○ちゃん。遊ぶ?」などの声掛けをします。そのときに「グルルル」などと威嚇したならば「そう。じゃぁまたね」とあっさり引き下がり読書を再開。これを何度も繰り返します。
 「ウケたい」というのは大型インコ最大の欲求ですから、ウケる相手になってあげることは、かなり効果的です。

 これを家族の協力の下、何度も繰り返します。他の家族が数日間旅行に行ってしまうのならば最高のシチュエーションです。そして心を開くようになったら、歌を歌って聞かせたり、常に声掛けをするなど、一歩踏み込み、あせらずに仲良くなっていきます。最終的には手に乗ってもらうまで行きたいのですが、くれぐれもあせらないようにしましょう。かつて仲が良かったことをプラスと勘違いして急ぎすぎてはいけません。関係悪化後は、かつて仲が良かったことはマイナス要因なのです。「可愛さ余って憎さ百倍」といったところでしょう。あせらず怒らずあきらめず、が原則です。

4−4 発情その他の要因での攻撃性の抑制

 鳥とは限らず動物全般は繁殖期、また性的成熟期を迎えた早々には、他者に対して攻撃的になる傾向があります。ヒトですら思春期(第二次性徴期)には「キレる」ことが多いのは皆さんご存じのとおりです。海外では「恐るべき2歳」と称してこの時期の攻撃性を問題視しています。
 大型インコの場合、繁殖期は春〜秋、特に晩春です。性的成熟期は4〜7歳と個体差が非常に大きいようです。こうした時期に攻撃的になるのは本能であり、自我形成という動物個体としての自然な行為ですから、むやみに抑制することは、かえって深刻な問題行動につながるおそれがあります。ですからこうした時期の対策は「いかに抑止するか」ではなく「いかに乗り切るか」といった考え方が根底になければいけません。荒れる中学生と向き合う教師になった気持ちで接してください。つまり無理なことは一切無効で逆効果であると考える必要があります。
 発情させない方法は「脂肪餌を与えない」「背中を撫でない」「巣と思わせる物を置かない」などが代表的ですが、これらは小型インコについて言えることで、知能の高い大型インコではなかなか成功しません。逆に純粋な意味での繁殖行動はあまり積極的ではありません(オオハナインコは繁殖行動を示しやすく巣引きが容易です)。頭が良いだけに相手の選り好みも激しいのかもしれません。
 そうなると、この季節の注意点としては、できるだけそっとしておくこと、ケージに手を入れるなどテリトリーを侵害する行為をしないことなどの消極策になります。しばらくの間はケージ越しのおつきあいに徹することも必要かも知れません。時間がすべてを解決することでしょう。

 繁殖目的がないのなら「かわいそう」「さびしそう」と言った安易な同情の気持ちでペアの相手を飼うことはオススメできません。相性の合う相手を探すことも大変ですし、仲が悪ければ殺し合うまでケンカすることもあり得ます。さらにヒトが外敵と認識されて余計に攻撃性が高まります。絶滅のおそれのある種を1羽飼いすることに批判の向きもあるようですが、通常の家庭環境で大型インコの繁殖はまず不可能です。かえって無理を強制することになるのです。それよりは人工繁殖として生まれてきた子たちを「家族の一員」として終生変わらぬ愛情で接してあげることこそがヒトとして大切なのではないかと思います。

5.自己中心鳥の矯正

 わがままで、家族の言うことを聞かず、自分の思い通りの行動をする鳥がいます。ヒトの子供でも「自己中心(ジコチュー)児童」が問題になっていますが、全く同じようなもので、家族として一緒に暮らす上でとても厄介なことです。この自己中心行動を矯正する方法を少し考えたいと思います。
 「矯正」「しつけ」と言うとヒトの一方的押しつけのように思われがちですが、鳥とヒトが一緒に楽しく暮らすためのルールづくり、と考えるべきでしょう。鳥を自由にさせていてヒトに鬱屈した感情が起こっては、楽しい鳥飼生活は長続きせず、悪循環に陥って、結果的に最悪の結果になってしまうこともあります。「鳥を飼う」と言うこと自体が一種の「不自然行為」であることを飼い主は自覚し、完全な自由は与えられない、与えることが「自然」なのではないと言うことを前提として、鳥とつきあって行くべきであると思います。ルールを双方が守って、心から楽しく暮らすことの方が、鳥にとっても幸せであることは言うまでもないでしょう。

5−1 自己中心鳥になる原因

1.自我の確立、性成熟
 大型インコの場合は生後1年ほどでヒナ換羽が終わって成鳥になり、また生後4〜7年で性的成熟期を迎えます。この2つの時期には精神的に不安定になりがちで、ささいなことに興奮したり攻撃的になったりする傾向があります。ヒトで言うと前者が4〜5歳の「ギャングエイジ」、後者が15〜18歳の「思春期」に相当すると考えると理解しやすいでしょう。こうした時期の乗り越え方はヒトの例が参考になります。つまり基本的には「やむを得ないこと」と割り切りつつ、行動を良い方向に「昇華」させるのです。ヒトで言うと「思春期のモヤモヤはスポーツで解消しなさい」みたいなものでしょうか。

2.飼い主の甘やかし
 これが自己中心鳥になる一番の原因です。可愛がるのはとても良いことなのですが、それがついつい「甘やかし」になってしまうのです。鳥は最初に行動するときに、飼い主の様子をうかがいながら行います。ちょっとつついてみる、噛んでみる、ケージに入るのをいやがってみる。みんな最初はそう強い行動に出ず、試しに行ってみるものです。新しい行動には冒険危険が伴いますから当然とも言えます。このときに厳しく叱らずに「まぁいいか、このぐらい」と甘くしてしまうと、「そうか、これは許容される行動なんだ」と思いこんでしまいます。しかるべき時には叱ることが大切なのです。自分にとって危険な行為は自己防衛本能から決して行わないものです。甘やかしが良い結果を生まないのはヒトでもまったく同じことでしょう。

3.飼い主自身の嫉妬、独占的支配欲
 飼い主本人は自覚していなくとも、可愛い愛鳥を自分だけの鳥にしたいという気持ちで接してしまうことがよくあります。この場合、オンリーワンの鳥となって、家族に攻撃的になってしまうことがあります。また飼い主以外の家族の言うことを決して聞かなくなってしまいます。オンリーワン鳥のしつけ相談で私がその鳥と接し、案外仲良くやっていると、それを見た飼い主が「あ、○○ちゃん、緊張してる、こわがっている、無理してる」などと言ったり、せっかく私の手に乗せて「他人の手に乗ること」に慣らしている横から「はい、○○ちゃん、帰ろうね」と横取りして「やっぱりお母さん(お父さん)が一番だよね〜」なんて言って悦に入っていることがあります。案外多いケースです。

 家族の中でもそうした行動をとれば、鳥は自らのステータス順位を誤解して、自分が飼い主の次に偉い存在と勘違いしてしまいます。また飼い主に精神的に依存して、何をしても飼い主が守ってくれると判断して問題行動に出ることもあります。ヒトで言えば、家の中でのお山の大将で、外に出ると他人にまともに挨拶もできない子、といったところでしょうか。こうした社交性のない子に育ちますと、さまざまな面で自己中心的な性格が助長されてしまいます。

4.飼い主のしつけの一貫性のなさ
 飼い主自身が一貫性を欠いているケースがあります。同じひとつの行為について、ある時は叱り、あるときは許容するようなことは、しつけの面からは大きなマイナスです。鳥としても基準があいまいになってどう行動して良いか判断できなくなって、その結果、問題行動に走る、叱ることが効かなくなることがあるのです。精神的なストレスもたまって、それが問題行動になる場合もあるでしょう。

 こういう「めりはり」のないしつけをしていますと、「叱る」ことを「攻撃された」と思われたり、逆に「遊んでくれている」ととられたりすることがあります。これではしつけが逆効果になって、ますます問題行動をエスカレートさせる悪循環に陥ってしまいます。人間不信になってしまうかもしれません。鳥にルールを守らせると言うことは、ヒトもルールを守って、めりはりあるしつけをする、ということだと考えて下さい。

4−2 自己中心行動対策

 これらの問題を解決するには、飼い主自身が気持ちを整理して一貫性を持った毅然とした姿勢で臨まなければなりません。「叱ったら嫌われるのではないかな?」と、ついつい甘くしてしまうことは勘違いです。ヒトの子供でも、いつも甘いだけの大人より、よく遊んでくれるし良いことをしたら誉めてくれる、でも悪いことをしたらビシッと叱る大人のほうに案外となつくものです。大人の方が嫌われないようにと子供の顔色をうかがうようでは、決して良いしつけはできません。鳥についてもまったく同じことが言えます。適切に「叱る」という行為は、人鳥関係を悪化させるどころか、より深い絆で結びつける効果があると言えるでしょう。臆せずに叱るようにしてください。

1.物理的位置を低下させる
 鳥は自分の定位置が物理的高いか低いかでステータスを決めると言われます。天敵から上空から襲われやすい鳥としては、少しでも高い位置にいたいという本能があるからでしょう。自己中心鳥のケージ、もしくは定位置の物理的な高低を再確認して下さい。ヒトの定位置(和室なら床に座った位置、洋室ならイスに座った位置)での目の高さは鳥の方が高くはありませんか?自己中心鳥を矯正する場合は、まず定位置をヒトより低くしてください(お互いの目の高さが基準)。肩に乗せるとヒトよりも鳥の方が目の位置が高くなりますから、決して肩には乗せないことです。

 ただしケージを床に直に置くことは温度管理上問題がありますので、10pは何かの形でかさ上げして下さい。またステータスを下げたことで多少食餌摂取量が減ったりすることもありますが、あまり気にする必要はありません。フンを全くしない、鮮緑色の下痢をする(絶食の証拠)、等の場合は、仕方がありませんので元の位置に戻す必要があるでしょうが、それでも十分「しつけ」にはなったはずです。それだけ精神的に影響を与えたことに注目して下さい。

2.一貫して叱る
 問題行動があれば叱ります。叱る方法は上記「噛まれたときの対処と叱り方」にあるように「フッと息をかける」「退場宣告」などいろいろありますが、白色オウムやコンゴウインコクラスの場合は、クチバシを閉じた状態でしっかり握って細かく左右に振りながら睨みつけ、強く短く「イケナイ!」と叱る程度の体罰?は許容範囲だと思います。指ではじく「クチバシぱっちん」は相手によっては「攻撃」と受け取られてしまうケースもありますので、あまりしない方が良いでしょう。

 ここで大切なのは「一貫性」です。同じ問題行動には同じ態度で叱って下さい。ここをあいまいにしますと、しつけは決して成功しないどころか、人間不信に陥ることもありますので十分注意して下さい。

 また、叱ったとのアフターフォローも大切です。叱られると鳥はビックリして「呆然」といった感じでいます。問題行動をやめて「呆然」状態が2分くらい経過したら、破顔一笑、「イイコだね〜」となでなでしてあげます。叱った後に誉めることは非常に大切です。どちらかと言えば「○○をしたら叱られる」ではなく「○○をしなかったら誉められる」という、プラス思考に導いてあげましょう。さらに「噛むより遊ぶ方が楽しい楽しい」と積極的に優しく声を掛けて下さい。たまに性懲りもなくまた問題行動(噛むなど)してくる子がいますが、そうしたらまた先ほどと同じく叱り、やがてフォローします。1回でもこれをいい加減にしてはいけません。これを繰り返すことで、して良いことと悪いことの区別がつくようになるのです。

3.社交性をつける
 とかく「お山の大将」「内弁慶」は自己中心的になりがちです。お客様を呼ぶ、お散歩に連れていくなど、他人の目に触れる機会を積極的につくってあげましょう。家では暴れ回っていた鳥が、外に連れ出すととたんにイイコちゃんになることは、よくあるケースです。これは精神的に緊張して「ビビっている」こともあるのですが、やはり他人の手に乗ることで広い世間のさまざまなことを知ることになり、自分の感情が解放されるということがあると思います。お散歩は諸条件が整わない場合はなかなか難しいかもしれませんが、安全対策に留意すればぜひ行っていただきたいことです。

 お客様やお散歩で広い世間、第三者の存在を知ったあと、鳥は自らの帰属する家族により深い愛情を持つものですから、そうした意味からもぜひ社交の機会を与えて欲しいと思います。まだ第三者の興奮が冷めないうちに、家族の手に順番に乗せたりしますと、普段手に乗ってくれない家族の手に乗ったりします。そうしたことを繰り返すことで、オンリーワン対策にもなるのです。
 オンリーワン対策と言えば、上記で指摘した「独占欲」はこの際放棄してください。みんなに愛され、みんなを愛してこその「家族」です。「お母さん(お父さん)が一番だよね〜」的な言動、思いこみはやめた方が家族みんなのためになるのです。

<実例>

ここで、実際に発情期を迎えたキバタンと楽しく暮らしている方の例をご紹介しましょう。とても参考になります。

「私は中キバタンのペアを飼っています。当初キバタンは♂だけだったのですが、6歳になった昨年春に発情したらしく、ずっと私にベッタリの状態でにっちもさっちも行かなくなったため、嫁を購入。すると、昨年末から本格的に発情し、ベタベタの甘えん坊で、よっぽど痛い事をされた時以外には噛む事などなかったその♂が、噛み付くようになったのです。時々は流血もしました。でも、発情期に気が荒くなるのは仕方のないこと。大人になったのだという事を理解して、多少距離を保った付き合い方をしていましたら、今月くらいから噛まなくなりました。発情が終わったのでしょうね。

 鳥も含めて、動物には成長に応じて精神的にも変化が現れてくるものです。人間の子供が思春期を迎えると一時親から遠のくように、大型鳥にもそういう時期がくると思います。反抗期の子供が荒れても、子供の発達についてわかっている親は、「反抗期で、親から精神的に自立しようとしているのだ。」と理解できますよね。決して「ああ、この子は変わってしまった。もう一生この子とは分かり合えないんだ。」なんて思わないでしょう。大型鳥に関しても似た事が言えると思います。やはり性成熟してくると、今までの愛らしい態度とは打って変わって攻撃的になったりしますが、永遠にそれが続くわけではありません。性成熟する前は「大人が子供を庇護し可愛がる」という関係で対処できますが、性成熟を迎えたら「大人対大人」の付き合い方が必要になってくると思うのです。以前のようにはベタベタしなくなるでしょうし、自我が強くなりもします。でもそれは、悪い付き合い方ではないと思います。

 (別の投稿にあった)アオメキバタンちゃんは、いきなり全く違う環境に放り込まれたのだから、緊張し怖くて噛んだのでしょう。当然の事です。もう少し時間をかけて環境に慣れて貰っていたら、と私としては少々残念です。子供は一般的に、動物との正しい接し方を知らず恐怖心を与えるこ事が多いので、噛まれる率も高くなるでしょう。これはその噛んだ鳥が悪いのでしょうか?それとも接し方を誤った人間に非があるのでしょうか?

 タイハクは確かにキバタンよりおっとりしてますが、扱いを誤れば噛み癖もつくでしょうし、成熟したら攻撃的になりもするでしょう。後者の事態に陥った時にどう感じるかは、飼い主さんの心構え次第。「ああ、扱いきれない。」と放り出すような真似はして貰いたくありません。いつか来る変化の事を理解しておかれる方がいいと思います。鳥が攻撃しようとしているかどうかは、鳥のボディランゲージで判断できますし、バタン類は特に羽で気分を表現しますので、分かりやすいです。「噛み付きモード」の時に近付かなければ噛まれませんし、鳥自身がテリトリーだと感じている場所に侵入しなければ威嚇される事もありません。噛まれないかとご心配でしたら、こういったことも知っておかれたら、噛み付かれて関係が悪化するのを防げるのではないでしょうか。

 かくいう私も、発情した大型鳥と接するのは初めてでしたので、結構噛まれまくりましたよ、最初は(^^;)。でも、「何故こういう行動を取るのか」という事を理解し、敬意を払って接していたら、今はまたイイ子になってくれてます。以前程にはベタベタしてくれませんが、だからといって私の事を嫌いになったという事ではないのが分かっているから、平気です。大人になっただけなのです。こういった事をある程度分かっていれば、落胆したり関係が悪化したりすることもないでしょう。私は「MY PARROT MY FRIEND」という本で勉強しました。オススメの一冊です。
『MY PARROT, MY FRIEND』 $25.00 ISBN 0-87605-970-1


大型インコの「噛み癖」について

 大インコ噛みの威力についてご心配の方は多いようですね。大インコと接している限りは、多少噛まれるのはやむをえません。猫飼いの方が猫に引っ掻き傷をつけられるようなものです。小さい子を飼っていても噛まれる事はよくありますので、大きい子と接していて噛まれるのもよくある事です。でも、ちゃんと手加減してくれますよ。なにしろ、本気で噛めば割り箸程度なら秒殺する力を持った嘴です。本気で噛めば人間の指などひとたまりもありません。でも、ちゃんと加減してくれますよ。

 私が飼っている中キバタンは、完全に荒鳥でした。人に全く馴れておらず、冠羽を立て、「フッ、フッ!」と威嚇する状態だったのです。でも、様子を見ながら「敵ではない」と言う事を分かって貰えるように接していたら、若鳥だった♂は1日半で、4歳以上になっていた♀も2ケ月でベタ馴れになってくれました。

 動物は、何の意味もなく他者を攻撃することはありません。必ず何かしら意味があって攻撃します。ある方がお迎えしたアオメキバタンちゃんは、数日でお店に戻られたように記憶しています。まだまだその方のことを「敵ではない」と認識できていなかったアオメキバタンちゃんの噛み付きは相当なものであったことは想像にかたくありません。もう一度言います。大インコの本気噛みは、ちょっとした棒くらいなら、瞬間で粉々にする威力を持っています。確かに「凶器」です。でも、信頼関係が培われていれば、その凶器を使う事はまずありません。どうか怖がらないで下さい。噛んだ鳥自身はもっと怖い思いをしているのです。

 極端な話し、人間が異星人にいきなり連れ去られ、全くわけのわからない言葉で話し掛けられ、肉体的接触をされたらどのように反応なさるでしょうか?おそらく「触らないで!」と暴れることでしょう。鳥も同じです。飼い主と御家族がどんなに愛情を持って接しても、それが鳥自身に伝わらない限りは受け入れて貰えないのです。そのかわり「敵ではない」と認識してくれたら、全てをまかせてくれます。

 私はウチの大インコに流血するくらい噛まれたと言っても、人馴れしてないセキセイに噛まれるよりはひどくありませんでした。爪切りのように嫌な事をしても、です。噛まれた方の場合、アオメキバタンちゃんの噛み方は、怖くて噛んだのでしょうから、かなり深くやられたのでしょうね。威嚇のレベルではなく、「自己防衛」の噛み付きだったのでしょう。厳しい事を言わせて頂きますが、それは飼い主さんの接し方が誤っていたためだと思います。威嚇モードを読み取れなかったのでは?威嚇噛みで病院行きになるほどの傷を負うとは、私には考えられません。

 鳥の気分が変わった時の事を考えると、肩に乗せたり頬ずりしたりというのは避けた方が安全かもしれません(私はやってますが)。でも、いきなり深く傷付くような噛み方はしないと思います。タイハクちゃんは今のところ、噛み付いたりはしてないのですよね?ならば、不必要な恐怖感を抱かないで下さい。こちらが身がまえると、その空気がむこうにも伝わって、ギクシャクしてきます。自然体で接してあげて下さい。鳥は「興味を持ったものにはまっしぐら」ですから。飼い主が身につけているピアスなどを引っ張って、飼い主に手ひどい傷を負わせる事もあります。これは、飼い主が注意を払う事で避けられる事故だと思います。あと、眼にちょっかいを出そうとする場合がありますので、その時は厳しく叱り付けて「ちょっかいを出してはいけない部分なのだ」と認識させた方が良いと思います。バタン類が冠羽を立てている時は、必ずしも噛み付きモードではありませんが、何かに興奮している状態なのは確かですので、そういった状態の時には迂闊にちょっかいを出さないほうが賢明です。優しく声をかけて、気分を変えてあげて下さい。

馴れた子の「威嚇モード」への対応について

 上記の文で「威嚇モード」を読み取って噛まれないようにする、というのは、鳥を馴らす段階で申し上げたのであって、鳥が馴れてくれ後は少々対応を変える必要があると思います。

 鳥が威嚇する度に人間側が「はい、分かりました。」と素直にひいていたら、鳥は「威嚇する事で人間をコントロール出来る」と思い込んでしまうと思うのです。「世界は我にあり」と(笑)。特にバタン類は頭に乗りやすいようです。鳥にとって快適な生活を提供するのは、飼い主の義務ですが、それは「何でもかんでも好きなようにさせてあげる」というのとは別問題です。人間が座るためのソファを鳥が気に入って、縄張にしようと思ったら、どうなるでしょう?そして人間が素直にひいてしまったら?もうソファはソファとしての役割を果たさなくなり、人間ははなはだ不自由な思いを強いられる事でしょう。
 鳥は犬のように力関係で言う事を聞く訳ではありませんが、人間が上位に立つのは鳥のためにも人間のためにも必要な事だと思います。誰も「鳥に隷属するため」に鳥を飼いはしないでしょう。お互い快適に生活出来るようにする為のルールは鳥に理解して貰う必要があると思います。それが「しつけ」というものでしょう。鳥が嫌がることは極力しないようにするのは言うまでもありませんが、「人間が嫌がることをしない」ように鳥にも妥協して貰わなければ、いつか関係が破綻してしまうでしょう。

 鳥が人間をコントロールしようとして威嚇してきたら、臆することなく立ち向かい、上下関係をわきまえさせる必要があると思います。この場合、威嚇噛みされてもびびらず、指を手のひらに隠れるように握り、腕の内側に曲げた手の甲を(招き猫のような形)鳥の目の高さより少し上に差し出すのが良いようです。これだと皮膚が突っ張って鳥が噛み付ける部分が無くなります。鳥は噛み付きが人間に功をなさないことに面食らいます。そして、自分より上に位置する「人間の手」を「自分より上位」と認識します。噛まなくなったら徐々に手の位置を下げて様子を見ます。再び噛むような素振りを見せたら、また手の位置を上げて、「手が上位」と認識させるようにします(このHP内で既に書いてある事ですね)。

 くどくなりましたが、「威嚇されたら引くべき」と誤解されたままでは、後々問題が起きる危険があると感じたので、書かせて頂きました。白色はその愛らしさからスポイルされ、超問題児になる事が多い鳥種ですので、しっかりしつける必要があります。決して鳥自身に「世界は自分を中心に回っている」などと感じさせないようにしなければ、最終的には鳥も人間も不幸になる事が多いと思うのです。大型のしつけは少々犬的でも良いかな、と思ったりします(勿論これは信頼関係が培われているのが大前提で、且つ体罰は厳禁ですが)。鳥がこちらを好いていてくれれば、こちらに嫌われるような事は、教えればしないようになります(限界もアリ)。愛情を持って、でも毅然とした態度で接して、みんなに可愛がられる良い子になって貰えれば、鳥自身も人間も幸せだと思います。大型飼いの皆様、頑張りましょうね」

6 しつけとトレーニングの洋書

しつけやトレーニングは欧米で特に研究が進み、かなりシステマティックな方法が確立されています。ただ、バードショーなどをターゲットにした記述も多く、「家族の一員」としての視点が欠けているものもありますので、取捨選択して読む必要があるでしょう。ここでは飼鳥の本を多く出版しているt.f.hの出版物を紹介します。
(価格は1997年12月現在、送料・税別)

書名 著者 内容 価格(円)
TAMING & TRAINING AFRICAN GREY PARROTS 96 Risa Teitler ヨウムの馴らし方とトレーニング法 1890
TAMING & TRAINING AMAZON PARROTS 96 Risa Teitler ボウシインコの馴らし方とトレーニング法 1890
TAMING & TRAINING COCKATOOS 96 Risa Teitler オウムの馴らし方とトレーニング法 1890
TAMING & TRAINING MACAWS 96 Risa Teitler コンゴウインコの馴らし方とトレーニング法 1890
TRAINING YOUR PARROT 192 K.P.Murphy トレーニング法の詳しい解説書 4550
PRPPER CARE OF COCKATOOS 256 Helmut Pinter オウム飼育の医食住 3220


日本でもこの分野の研究が進んでいます。このページは今後も加筆していく予定です。